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@管理行為の意義
(a)管理行為の態様とて次のものがあります。
(イ)保存行為は、財産の現状を維持するための行為です(→保存行為とは)。
例えば財産である家屋を修繕する行為です。
(ロ)利用行為は、財産を有利に利用するための行為です。財産である家屋を住居として事実上利用する場合はもちろん、法律上利用する場合も含みます。
(ハ)改良行為は、財産の性質を変じない範囲内でその価値を増加する行為です。
例えば財産である家屋の造作を見栄え良くするような場合が該当します。
(b)管理行為は、処分行為に対する用語です。
(c)権限に定めのない代理人は、管理行為をする権限しか認められません。
(d)管理行為に関して、民法第252条は、「共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」と定めています。
なお、前条(民法251条)とは、「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」というものです。
すなわち、共有物に変更を加えることがない限り、各共有者は、持分の価値の過半数による決に従い、共有物を使用できます。
(e)また昭和36年(オ)第397号・最高裁(建物収去土地明渡請求事件)は、共有物の賃貸契約に関して次のように判示します。
・共有者が共有物を目的とする貸借契約を解除することは民法二五二条にいう「共有物ノ管理ニ関スル事項」に該当し、右貸借契約の解除については民法五四四条一項の規定の適用が排除されると解すべき出る。
なお、民法544条第1項は「当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。」というものです。
・共有物を目的とする貸借契約の解除は民法二五二条但書にいう保存行為にあたらず、同条本文の適用を受ける管理行為と解するのが相当であり、上告人は本件土地について二分の一の持分を有するにすぎないというのであるから、同条本文の適用上、上告人が単独で本件貸借契約を解除することは、特別の事情がないかぎり、許されないものといわねばならない。
A管理行為の内容
(a)前述の判例を前提として、知財の分野では、共有に係る特許権について設定された専用実施権設定契約の解除は民法252条本文・民法264条本文の管理行為に当たり、民法252条但書の保存行為ではないから、共有者単独で解除権を行使することはできないとした事例があります。
→管理行為のケーススタディ1
(b)ちなみに特許法は民法の特別法であり、特許法第38条において「特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。」と規定しています。
仮にこうした規定がなければ、特許出願の性質を検討し、これが民法上の管理行為中の保村行為や利用行為などのいずれに該当するのかを解釈して、特許出願が共有者単独でなし得るものなのか、或いは共有者全員でのみできるのかを判断しなければなりません。
特許法上に明文の規定があることにより、特許出願の実務の運用が明確になります。
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