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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1174   

補助参加CS1/特許出願

 
体系 行政行為
用語

補助参加のケーススタディ1(民事訴訟法の)

意味  補助参加とは、訴訟の結果に関して利害関係を有する第三者が当事者の一方を補助するために、その訴訟に参加することを言います(民事訴訟法第42条)。


内容 @補助参加の異議

(a)民事訴訟法第42条には、「訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。」

(b)ここでいう「利害関係」とは、法律上の利害関係をいい、経済上の利害関係を含まないものと解釈されます。

 例えば特許権侵害訴訟事件において、侵害者を排除できるかどうかは、通常実施権者が特許発明の実施である事業を遂行する上で影響があるでしょう。同じ発明を実施するライバルが少なくなるからです。しかしながら、それは経済的な影響に過ぎず、法律上の利害関係とまでは言えません。

 ところが特許権者と通常実施権者との間で前者が後者のために侵害者を排除する旨の条項がある場合には、事情が変わってきます。そうした事例を紹介します。

A補助参加の事例の内容

(a)ここでは、昭和35年(ヨ)第2667号(ポリプロピレン事件)を紹介します。これは、特許権侵害差止仮処分申請事件において通常実施権者の補助参加の申請の是非が争われた事件です。

(b)甲は、「α―オレフインを選択的に重合して結晶性または無定形のポリマーにする方法」の発明についてイタリア国及びドイツ国への特許出願に基づくパリ条約優先権を主張して、我が国への特許出願をし、特許権の設定登録(第二五一八四六号・第二五六〇二九号)を受けた後で、乙に対して通常実施権を許諾しました。その契約書には、「実施権者等は、本件特許権の侵害又は侵害のおそれのあることを知つたときは、直ちに特許権者にこれを通知する。特許権者は、実質的侵害を防止するため、必要に応じ、特許権侵害に対する訴訟を提起し、誠意をもつてこれを遂行する」と定められていました。

(c)乙は、丙に対して、当該通常実施権に関して、再実施権を許諾しました。

 その契約書には「実施権者等は、本件特許権の侵害又は侵害のおそれのあることを知つたときは、直ちに特許権者にこれを通知する。特許権者は、実質的侵害を防止するため、必要に応じ、特許権侵害に対する訴訟を提起し、誠意をもつてこれを遂行する」と定められていました。

(c)甲は、丁に対して自分の特許権の侵害行為の停止を求めて仮処分の申請を行い、乙及び丙は、補助参加人として当該審理への参加を申請しました。

(d)裁判所は、次の理由により参加の申請を許可しました。

「思うに、許諾による通常実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明を実施する権利を有する(特許法七八条二項)。しかし、この権利は債権たる性質をもち、排他性がない。

 すなわち、許諾者(特許権者等)に対し、当該特許権を、実施許諾契約で定めたとおり実施させるよう求める請求権(契約履行請求権)であるが、排他性はないから、特許権者等は範囲の重複する通常実施権を二人以上の者に重畳的に許諾しうるわけであり、このことは、何ら、許諾者の債務不履行を構成するものではない。

 したがって、許諾をうけた通常実施権者にとっては、他の許諾通常実施権者の発生は、経済的には競争者の発生として重大な利害関係があるが、法律上は利害の関係に立たないことは、いうまでもない。

 しかし、だからといって、特許権の違法侵害者の発生をも、他の許諾通常実施権者の発生と同様に、許諾通常実施権者に法律上何らの影響を与えないということはできない。けだし、実施許諾者は、通常実施権者がその特許発明を実施するのを容認する義務(不作為義務)を負うと同時に、さらに発明の実施を実質的にも完全ならしめる意味で、第三者の違法な特許侵害を差止める義務(作為義務)をも負担するものと解するのが相当である。

 通常実施権者は専用実施権者とちがって、自ら侵害に対し差止請求訴訟ができないと解されるため、許諾による通常実施権者に対しては、許諾者は実施許諾契約に基づく債務として、反対の特約なき限り、右のような第三者の違法な特許侵害に対する排除義務を負担していると解するのが、契約の解釈における信義則に合致するからである。」

zu

[コメント]

(a)学者の立場からは、本判決に反対する意見もあります。すなわち、

 民事訴訟法42条にいう「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」の利害関係とは、補助参加人の法律上の地位に対して、裁判所の判断が事実上影響されることを言うのであり、例えば、

(イ)敗訴により、被参加人から補助参加人へ一定の請求を受ける蓋然性がある場合

(ロ)被参加人と補助参加人を当事者とする第二の訴訟で、敗訴の判断に基づいて補助参加人の責任が分担させられる蓋然性がある場合

 が挙げられるが、特許侵害差止仮処分の申請である本事件の場合には、補助参加人の立場は、これら2つのどれにも該当しない

 というのです。

(b)しかしながら、実務家の立場からは、法律上の利害関係を前述の(イ)及び(ロ)に限定する必要はないと考えます。

 本件の場合、特許権者甲は、通常実施権者乙との契約条項(施権者等は、本件特許権の侵害又は侵害のおそれのあることを知つたときは、直ちに特許権者にこれを通知する。特許権者は、実質的侵害を防止するため、必要に応じ、特許権侵害に対する訴訟を提起し、誠意をもつてこれを遂行する)に基づいて仮処分の申請を行っているに過ぎないものと理解されます。

 そうなると、侵害を排除することに直接の利害を有するのは、特許権者甲よりもむしろ通常実施権者乙及び再実施権者丙ですから、丁の実施状況について詳しく知るのも当該実施により自らのビジネスチャンスを奪われている乙及び丙であると言うことになります。

 仮に乙及び丙の参加の申請を認めないとすると、裁判官が事件の状況に関してより詳しく知りたいと考えても、甲を通じて間接的にしか情報を得られないことになります。

 仮処分の申請に対しては迅速な対応が求められることを考えれば、これは不合理であり、前述の“法律上の利害関係”をことさらに厳格に解釈する必要はないと考えます。


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