内容 |
①実績補償方式の意義
(a)職務発明制度においては、発明完成に至るまでの研究者(従業者等)の努力に対して適切な報酬(相当の利益)を支払うことが重要です。それが不十分であると、特許出願に結びつく研究成果が得られにくいからです。
(b)しかしながら、発明は無体財産であり、それが将来どの程度の実績(実施の実績など)に結びつくのかが解らないという問題点があります。
(c)また特許出願をしても、新規性や進歩性を欠いていることが審査で判明し、権利化に至らないこともあります。
(d)もちろん、社内審査により、実施の可能性や新規性・進歩性などの特許性を調べて権利化に向けた手続を断念する場合もあります。
(e)そこで例えば特許出願に至った時点、そして登録の至った時点でそれぞれ一時金を支払い、その後は実績に応じて追加の補償を行うという方式が行われています。
ここで特許出願時に支払われる金員を「出願補償金」と、登録時に支払う金員を「登録補償金」ということがあります。
②実績補償方式の内容
(a)特許出願時及び登録時に支払われる金員は、一般的に次の視点から、例えば発明をランク分けして評価することが多いです。
・発明の技術的意義
例えば革新的な発明や基本発明はランクA、革新的とまでは行かなくても斬新なアイディアを有する発明はランクB、改良発明はランクCという如くです。
・特許出願が拒絶され、或いは特許が無効となる可能性
特に先行技術との関係で進歩性や新規性の欠如が問題となります。
(b)実績に応じて支払われるべき金員は、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」に基づいて定めることがでいます。
→使用者等が受けるべき利益とは
例えば特許権者である使用者等が自ら実施して得た利益、および、他者に実施させて得たライセンス料です。
(c)実績の算定機関としては1年以下の期間が設定されることが多いようです。
(d)実施補償方式では以上の手順により、前述の従業者等が受けるべき“相当の利益”を決めていきますが、この利益の額は、当該発明により使用者等が受けるべき利益の額から考えて不合理なものであってはなりません。
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