パテントに関する専門用語
  

 No:  884   

確認の利益CS/特許侵害

 
体系 権利内容
用語

確認の利益のケーススタディ

意味  確認の利益とは、認の訴えについて要求される権利保護の利益を言います。ここでは特許侵害事件を題材としてどういう場合に確認の利益が問題になるのかをケーススタディします。


内容 事例1

[事件番号]平成8年(ワ)第2803号

[事件の種類]差止請求権等不存在確認訴訟

[発明の名称]「磁気信号記録用の金属粉末」(特許第一七三三七八七号)

[原告の主張]

・原告Xが製造販売する金属粉末について、前記特許権を有する被告Yが原告Xに書簡を送り、原告Xが製造、販売する「磁気信号記録用金属粉末」(以下本件金属粉末1といいます)について、製造、販売が本件特許権を侵害すると主張した。

・また、更に被告Yは原告Xに対し、具体的に金属粉末(以下本件金属粉末2、3といいます)の金属組成等を示して、その製造、販売が被告Yの有する本件特許権を侵害する、と主張した。

・原告Xは、主位的請求として、本件金属粉末1について本件特許権を侵害するものではないので、差止請求権、損害賠償請求権、不当利得返還請求権がないことの確認を求め、予備的に本件金属粉末2、3について本件特許権を侵害するものではないので、差止請求権、損害賠償請求権、不当利得返還請求権がないことの確認を求める(→予備的請求とは

[被告の主張]

・被告Yは、本件金属粉末1については、その製造販売が本件特許権を侵害していると主張したことはないし、これからも主張するつもりはないから、確認の利益がない。

・本件金属粉末2と3については、原告がその磁気粉末の成分、特性等の特徴を具体的に明らかにしない限り、不特定なものであるから、確認請求は却下されるべきである。

主位的請求:被告が原告に対し、前記特許権に基づき、別紙「物件目録」一記載の金属粉末の製造・販売につき、差止請求権損害賠償請求権・不当利得返還請求権を有しないことを確認すること。

予備的請求:被告が原告に対し、前記特許権に基づき、別紙「物件目録」二記載の金属粉末の製造・販売につき、差止請求権・損害賠償請求権・不当利得返還請求権を有しないことを確認すること。

[裁判所の判断]

(a)裁判所は審理の上、平成12年1月25日に判決を下しました。そして現告Xの主位的請求に対しては請求を却下し、予備的請求について原告の主張を認めて、請求を認容しました。

(b)裁判所は、原告の主位的請求に対しては、次のように判示しました(なお原告Xは、訴訟中において、本件金属粉末1として、次のように特定しました。「磁気信号記録用金属粉末。ただし、原告が平成5年2月17日以後平成7年12月31日までに製造および販売したものと同一のもの」

(c)確認の利益は、原告の法律上の地位に不安ないし危険が現に生じており、それを除去する方法として、原告・被告間で確認請求の対象たる権利または法律関係の存否について判決することが有効適切な場合に、認められるものである。本件主位的請求においては、確認請求の対象たる権利の客体は、上記の通りであり、その金属粉末自体については、製造・販売の主体も時期も商品名も何ら特定されていない。このような金属粉末については、製造・販売の差止請求権、損害賠償請求権、不当利得返還請求権の不存在を確認しても、原告が製造および販売したものと「同一のもの」という概念が一義的に明確ではない以上、結局のところ、具体的金属粉末について原告が平成5年2月17日以後平成7年12月31日までに製造および販売したものと同一のものであるかどうかという紛争がなおも残存するのであって、原告・被告間の紛争の終局的解決に寄与するものではなく、原告の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険を除去する方法として有効適切であるとはいえない。また、本件においては、被告が原告に対し本件金属粉末1の製造販売が本件特許権を侵害すると主張したことを認めるに足りる証拠はなく、原告の法上の地位に不安ないし危険が現に生じているということもできない。


留意点

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