内容 |
②特別裁判籍の意義
(a)民事訴訟法上、ある事件がどの裁判所の裁判権の行使に服するかを定める根拠となる関係を裁判籍と言います。
(b)そして裁判籍に関する一般的な定めとして普通裁判籍があります(→普通裁判籍とは)。
(c)しかしながら、限られた種類の裁判籍に関しては普通裁判籍とは別の裁判籍の候補を挙げて当事者がどちらかを選べるようにした方が裁判を行う上で便利な場合があり、また特定の範囲(特許侵害など特許権等に関する訴え)では普通裁判籍とは別の土地を管轄区域とする裁判所の専属管轄とするのが良い場合もあります。
(d)そうした趣旨から民事訴訟法5条以下に特別裁判籍が規定されています。
②特別裁判籍の種類
(a)当事者が普通裁判籍と特別裁判籍とを選べるもの
(民事訴訟法第5条)
次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
一 財産権上の訴え
義務履行地
二・三 (省略)
四
日本国内に住所(法人にあっては、事務所又は営業所。以下この号において同じ。)がない者又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え
請求若しくはその担保の目的又は差し押さえることができる被告の財産の所在地
五 事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するもの
当該事務所又は営業所の所在地
六〜八 (省略)
九 不法行為に関する訴え
不法行為があった地 (→不法行為地とは)
十〜十五 (省略)
(b)特別裁判籍を管轄区域とする裁判所に提訴しなければならない場合
(民事訴訟法第6条)
特許権、実用新案権、回路配置利用権又はプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴え(以下「特許権等に関する訴え」という。)について、前二条(民事訴訟法4〜5条)の規定によれば次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有すべき場合には、その訴えは、それぞれ当該各号に定める裁判所の管轄に専属する。
一 東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所又は札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所 東京地方裁判所
二 大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所又は高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所 大阪地方裁判所
③特別裁判籍の内容
(a)前述の財産の所在地に関しては、特許法第15条に次の規定があります。
在外者の特許に関する権利については、特許管理人があるときはその住所または居所をもって、特許管理人がいない時には特許庁の所在地をもって、民事訴訟法第5条第4号の財産の所在地とみなす。
→特許管理人とは
(b)特許権(特許出願中の場合には特許を受ける権利)は、無体財産権ですので、現実の財産の所在地というものが存在しないからです。
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