内容 |
①契約締結の自由の意義
契約自由の原則は、私人関係の基本を“身分”から“契約”へと変更するべきという近代法の思想の下で生まれました。身分制度の下では、支配される側の人々は否応なしに一定の義務を負わされました。契約締結の自由は、そうした前時代の法制度の在り方を否定し、契約の締結をするのも、しないのも本人の自由であることを保証しています。
②契約締結の自由の内容
(a)例えば、平成20年改正で創設された制度として、特許出願の段階での独占的ライセンスである仮専用実施権の制度と、特許出願の段階での非独占的ライセンスである仮通常実施権の制度とがあります。
これらは当該特許出願について特許権の設定の登録がされたときに専用実施権が設定され、或いは通常実施権が許諾されたとみなす制度です。
ライセンシー(設定・許諾を受ける側)が特許出願に係る発明の実施の準備を安心して進めることができるようにするための仕組みですが、将来の特許出願の拒絶によりライセンシーの権利も消滅するリスク、或いは特許出願の請求の範囲の補正により、ライセンシーの権利も変動するリスクがあります。
これらを踏まえて、特許出願中の段階で仮専用実施権・仮通常実施権のライセンス契約を行うのかは、ライセンサー(設定・許諾をする側)である特許出願人と相手側の合意により自由に決定することができます。
(b)他人の特許発明を創作の基礎とした改良発明等をした者が特許出願をして、当該改良発明等について特許を取得した場合に、それら改良発明は利用発明と呼ばれます。後願権利者が利用発明を実施するために通常実施権の設定の協議をすることができますが(特許法92条第1項)、これに対して、先願権利者は利用発明についての通常実施権の設定の協議を求めることができます(同法第2項)。
クロスライセンスにより特許の活用を図るためです。
もちろん契約をするしないは自由ですので、協議を求めなくても構いません。
(c)特許法上の実施は、生産・使用・譲渡・輸出・譲渡等の申出の6つがあります。これら実施形態のそれぞれに関して特許ライセンスは成立します。
どの実施行為に関してライセンス契約を締結するかは当事者の自由ですが、一般的には製造・譲渡はセットでライセンス契約をすることが推奨されます。例えば親会社と子会社との間で前者が販売を、後者が製造を分業するような場合は別ですが。
そうしないと、特許品を製造しても販売できない、というトラブルに陥るからです。
またライセンシーが製造した物を輸出することを予定している場合、“輸出”の形態も契約書に盛り込んでおくことが推奨されます。
|