内容 |
@一切の手続の意義
(a)特許法上の補助参加人は、当事者適格を有しないとはいえ、審決の結果に対して利害関係を有しますので、独立の立場で自分の利益を守るために必要な一切の手続をとることができます。
すなわち、特許法第148条第4項に「前項の規定による参加人(補助参加人)は、一切の手続をすることができる。」と規制されています。
(b)民事訴訟法にも特許法第148条第4項と同様の規定があります。民事訴訟法第45条第1項には「補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない。」と規定されています。
A一切の手続の内容
(a)例えば無効審判請求人が新規性の欠如(特許出願時に特許発明が公知だったこと)及び進歩性の欠如を理由として争っている場合に、補助参加人が“新規性がないというのは無理であるが、進歩性がないことは主張できる”と考えれば、その旨を主張することができ、またその主張を裏付けるために、請求書の要旨に反しない範囲で、特許出願時の技術水準を独自に調査して周知技術に関する証拠などを提出することもできます。
もちろん、補助参加人としては敢えて“新規性はないが…”という必要はありませんが、話の流れの中で不用意に言う可能性はあります。
無効審判人が“新規性がない。”と言い、審判請求人を補助する参加人が“新規性はあるが、進歩性がない”と言うのは、矛盾のようですが、職権主義が支配する審判においては、その主張により特別の不利益は生じません。
(b)弁論主義が支配する民事訴訟、例えば特許侵害訴訟において、被参加人が“新規性がない”ことを根拠とする主張を展開しているのに、補助参加人が“新規性はあるが…”という主張をするのは、適当ではありません。被参加人と対立する当事者が“新規性がある”と主張しているとすれば、相手の言い分を認めることになり、仮にこれが“裁判上の自白”となるとすれば、被参加人に極めて不利となるからです。
かかる事態を避けるために、民事訴訟法第45条第2項に「補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない。」と定められています。
抵触する行為としては、前記自白の他に、和解・請求の放棄・認諾があります。これらの行為は、職権主義の立場に立つ審判制度ではあり得ませんので、特許法には民事訴訟法第45条第2項に相当する規定はありません。
(c)「一切の手続」には、無効審判中の明細書・特許請求の範囲・図面の訂正の請求(特許法第134条の2)は含まれません。訂正の請求主体は、被請求人である特許権者に限られているからです。
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