内容 |
①一部判決の意義
(a)一部判決は、終局判決のうちで、複数の請求が審理されているときに、そのうちの一部を他の事件と切り離して先に出す判決です。
(b)一部判決された後の残りの請求についての判決は、残部判決、結末判決と呼ばれることがあります(→残部判決とは)。
(c)一部判決をする条件として、民事訴訟法第243条第2項、3項に次のように規定されています。
(2項)裁判所は、訴訟の一部が裁判をするのに熟したときには、その一部に関して終局判決をすることができる。
(3項)前項の規定は、口頭弁論の併合を命じた数個の訴訟中その一が裁判をするのに熟した場合及び本訴または反訴が裁判をするのに熟した場合について準用する。
(d)特許侵害訴訟において、主位的請求として損害賠償請求を、予備的請求として不当利得返還請求をするというように、請求同士が択一的な関係にあるときには、これらの請求の一部について一部判決をすることは不適当です。
→予備的請求とは
②一部判決の内容
(a)請求の一部(実用新案登録の無効とするとの判決を求めること)の訴えを却下する旨の一部判決をした事例を紹介します(昭和46年(行ケ)第37号)。
(b)原告は、実用新案登録を無効とする旨の申立を行った。
(c)その請求原因として次の事柄が記載されています。
・本件登録に係る実用新案登録出願より先の意匠登録出願が存在するから先願主義に違反する旨
・当該実用登録に関して無効審判を請求したが、審判の請求は成り立たない旨の審決が出された旨
(d)先願主義とは、同一の対象に関して複数の特許出願又は実用新案登録出願が競合した場合に最先の出願人のみが権利を受けることができるというルールです。特許出願と実用新案登録出願とは、対象が同じ(技術的思想の創作)であるため、先願主義の適用がありますが、特許出願と意匠登録出願との間、実用新案登録出願と意匠登録出願との間には、先願主義の適用はありません。
従って無効審判で請求を棄却したのは止むをえないところです。
(e)裁判所は、原告の請求は、無効審判の審決の取消に対する訴えと解釈するしかないとした上で、審決取消訴訟の出訴期間を徒過しているから、訴訟要件を欠くとして当該請求の一部を却下する判決を出しました。
|