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 パテントに関する専門用語
  

 No:  986   

特許出願の処理/補償金請求権

 
体系 特許出願の審査
用語

補償金請求権のケーススタディ(警告)

意味  補償金請求権とは、特許出願の出願公開が行われた後特許権の設定登録前に特許出願に係る発明を実施した者に対して、警告等を条件として特許出願人が補償金を請求できる権利です。

 ここでは警告後に特許請求の範囲が補正された事例に関して、昭61(オ)31号 ・ 昭61(オ)30号「アースベルト」事件を題材にして司法の考え方を紹介します。

 なお、この事件は、実用新案登録出願に関するものですが、現在の実用新案法では、無審査登録主義の導入により、出願公開も補償金請求権がないため、混乱を避けるために、特許出願に置き換えて紹介します。


内容 @事例1

[事件の経緯]

 昭和五三年五月二三日、特許出願がなされる(請求の範囲は別紙(一)の通り)、

 同五四年一二月一日、出願公開される

 同五五年五月一四日拒絶理由の通知がなされ、

 同五五年七月一七日、出願人は請求の範囲を別紙(二)記載に補正する、

 昭和五六年六月一九日出願公告がなされ、

 同年一一月一二日登録がなされた。

別紙(一)

「表面に螢光黄色使用の表示マークを施し、適当な重量をもつ反射板を取付けると共に締付けボルトによつて柔軟帯板の長さを容易に調節出来るようにされた導電性ゴム柔軟帯板中に銅線を埋没した自動車接地具」

別紙(二)

「自動車フレームに導電性板体が先端を接地させて吊架可能にされている自動車接地具において、前記フレームに接続する導電性ゴム製帯体の基部に前記フレームに対する取付金具が該帯体に対し取付位置調節、相対移動可能に付設され、前記帯体の下位に反射板が取付位置調節、相対移動可能に取付られていることを特徴とする自動車接地具」

ところで、前記法案に基づく補償金請求権発生要件の関係においては、出願公開後において補正がなされたときは補正された時点において新たに出願がなされたものと解するのを相当とするところ、本件においては右補正後において控訴人らが被控訴人らに対し前記法条に基づく警告を発した事実を認めるに足りる証拠はなく、また、被控訴人らが右補正後同法条所定のいわゆる悪意の状態にあつたことを認めるに足る的確な証拠はないから、本件請求は、出願公開以後の補償金を請求する分はもとより、補正後の分についても、その余の点を判断するまでもなく失当であるといわざるをえない。

[高等裁判所の判断]

 本判決は、不正競争防止法第1条第1項第1号による請求を主位的請求とし、予備的請求とする前判決のうちの判断遺脱部分についての追加判決ですが、その中で次のように判断されています(→追加判決とは)。

 本件発明の出願公開時の請求の範囲は、原追加判決添付の別紙(一)記載のとおりであるが、

 審査官から昭和五五年五月一四日付拒絶理由の通知を受けたため、原告は、同年七月一七日付で請求の範囲を同別紙(二)記載のとおり補正したので、

 補償金請求権発生要件の関係においては、出願公開の後に補正がされたときは、右補正の時点で新たに出願がされたものと解するのを相当とするとし、本件においては、右原告が被告らに対し前記補正後に同条所定の警告をし、あるいは被上告人らが同条にいう悪意の状態にあったことを認めるに足りる証拠はない。

 従って原告の同条に基づく補償金支払請求を棄却する。

[最高裁判所の判断]

 特許出願人が出願公開後に第三者に対して特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をするなどして、第三者が右出願公開がされた特許出願に係る発明の内容を知った後に、補正によって特許請求の範囲が補正された場合において、

 その補正が元の特許請求の範囲を拡張、変更するものであって、第三者の実施している物品が、補正前の特許請求の範囲の記載によれば発明の技術的範囲に属しなかったのに、補正後の特許請求の範囲の記載によれば発明の技術的範囲に属することとなったときは、

 特許出願人が第三者に対して特許法第65条に基づく補償金支払請求をするためには、右補正後に改めて特許出願人が第三者に対して同条所定の警告をするなどして、第三者が補正後の特許請求の範囲の内容を知ることを要するが、

 その補正が、願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において補正前の特許請求の範囲を減縮するものであって、第三者の実施している物品が補正の前後を通じて発明の技術的範囲に属するときは、右補正の後に再度の警告等により第三者が補正後の特許請求の範囲の内容を知ることを要しないと解するのが相当である。

 第三者に対して突然の補償金請求という不意打ちを与えることを防止するために右警告ないし悪意を要件とした同条の立法趣旨に照らせば、前者の場合のみ、改めて警告ないし悪意を要求すれば足りるのであって、後者の場合には改めて警告ないし悪意を要求しなくても、第三者に対して不意打ちを与えることにはならないからである。


留意点

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