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物の輸出は、平成18年の特許法改正までは特許法上の「実施」ではありませんでした。
Aしかしながら、世界が一市場化した今日では、我国の特許出願人が、同時に複数の国で同一内容の特許出願をし、各国で特許が成立する場合があります。こうした事業者の立場からすると、日本から他国へ侵害品が輸出され、当該国での自分の市場が荒らされるのを指をくわえて見ていなければならないとすれば、腹立たしいことです。
B平成18年改正前には、「輸出」は譲渡の概念に含まれるので、譲渡の問題として扱えば足りるという考え方もあったようです。確かに我国の輸出者甲と他国での輸出者乙との関係ではその通りですが、我国内の本社から他国の支社への貨物の出荷のような場合には譲渡の概念に当てはまりません。
Cそこで経済のグローバル化の進展により、我国の侵害品が国境を越えて移動する事例が増大するなど、模倣品問題の国際化・深刻化に鑑みて、「輸出」を物の発明の実施態様に加えました。これにより国内の製造や譲渡の段階では差止ができない場合であっても、輸出者が判明した場合には、権利者が輸出の段階で差止等の措置を講ずることができます。
Dなお、輸出自体は国内で行われる行為であり、我国の特許権の効力を海外の譲渡行為に及ぼすものでないので、属地主義には反しません。
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