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●平16(ワ)9208号


単純方法の発明の実施/実施行為/特許権の行使

 [事件の概要]
@原告(特許出願人)Xは、「マンホール枠を含む舗装の切削オーバーレイ工法」について特許出願をして特許を取得しました。

A本件発明の特許請求の範囲の記載は、次の通りです。

「マンホール枠を含む舗装の切削オーバーレイ工法において,

(a)マンホール枠周囲の舗装が筒状に切断されると共に切断舗装版及びマンホール枠が撤去される工程,

(b)マンホール基壁上に支持蓋が仮設されると共に支持蓋周囲の空洞部に舗装材が打設される工程,

(c)舗装表面がマンホール基壁上の舗装材表面も含めて切削されると共に切削面にオーバーレイが施工される工程,

(d)マンホール枠の設置予定域周囲の舗装がオーバーレイ上から筒状に切断されると共に切断舗装版及び支持蓋が撤去される工程,

(e)マンホール基壁上にマンホール枠の据え付け基礎が構築されると共に据え付け基礎上にマンホール枠がその上面をオーバーレイ表面の高さに合わせて設置される工程,
及び(f)マンホール枠周囲の空洞部に舗装材がオーバーレイ表面の高さまで打設される工程からなる切削オーバーレイ工法。」

BYは、国土交通省の新技術情報提供システムに自らの工法(Y工法)を登録申請し、当該工法はインターネットにより流布されています。その内容は、次の通りです。

「(A)路面に切断溝を形成し,マンホールリムーバによりマンホールフレームを撤去する工程、(B)連結装置付鉄蓋を据え付け仮復旧する工程、(C)切削オーバーレイ工事を施工する工程、(D)路面に切断溝を形成し,連結装置付鉄蓋とともに舗装版を撤去する工程、(E)マンホールフレームを据え付ける工程、(F)モルタル,道路復旧材で復旧する工程、(G)からなる切削オーバーレイ工法。」

CXは、Y工法が本件発明の技術的範囲に属すると主張して,本件特許権に基づき,Y工法の実施の申出及びパンフレットの配布の差止め等を請求して本訴訟に至りました。

DXは、訴訟において次のように主張しました。

 「本件発明は,道路舗装工事及びマンホール工事の工程によって舗装道路を完成させるものであるから,物を生産する方法の発明に該当するところ,被告の上記行為は,いずれも発注者に対しかかる方法を使用して完成させた舗装道路をその本来の目的に供しうる状態で引き渡す旨を申し出ているものであって,当該方法により生産した物の譲渡等の申出に該当する。」

EYは、訴訟において次のように主張しました。

 「『物を生産する方法の発明』の『物を生産する』とは,物を新たに生産することであり,新たな物の生産を伴わない,単なる物の修理や修繕は『物を生産する方法の発明』に該当しない。既存の舗装道路の修繕は新たに舗装道路を構築するものではないところ,本件発明は,舗装表面にひび割れや破損が生じた既存の舗装道路の修繕を目的としてなされるものであって,修繕前とは異なった新たな構造の道路を構築する目的はないから,『物を生産する方法の発明』には該当しない。」


 [裁判所の判断]
 裁判所は次のように判断しました。

ア.本件発明が物を生産する方法の発明に該当するか否かは,まず,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて判定すべきものである(最高裁平成10年(オ)第604号)。

イ.本件発明の特許請求の範囲の記載より,本件発明は,マンホール枠を含む舗装の切削オーバーレイ工法における複数の工程からなる工法であって,物の生産を伴うとはいえないことが明らかであるから,方法の発明であり,物を生産する方法の発明には該当しない。


 [コメント]
 物の修理が“修理した状態の物の生産”に相当するという論法が認められれば、特許権者にとって都合がよいのですが、裁判所はこの見解に関して否定的であります。社会通念から考えて、「生産」は新たな物を生み出すこと、「修繕」は物を以前の状態に戻すことであり、異なる概念です。用尽説では、実質的な物の生産に当たる行為を、「修理」の名を借りて行うことが不適当と考えられる場合がありますが、単純方法の発明か物を生産する方法の発明かという問題では、特許出願の際に「物を生産する方法」として特許請求の範囲に記載することもできたのですから、物を生産する方法と認める根拠は乏しいと考えます。


 [特記事項]
 
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