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判例紹介
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●平成20年(ワ)第9742号


譲渡の申出/実施行為/特許権の行使

 [事件の概要]
@ウェブサイトによる譲渡の申出に関して、原告は,被告が被告のウェブサイトにおいて被告物件の譲渡の申出をしていると主張しています。

Aこのウェブサイトにおいては、次の事実が認められます。

ア.本件訴え提起時点で閲覧可能な被告のウェブサイト(英語表記)において「Slim ODD Motor」(スリムオプティカルディスクドライブモータ)を紹介するウェブページ(甲4−1−1)が存在し,同ページの「Part Number List」という項目を選択すると,別のページ(甲4−1−2)が表示され,同ページには被告物件の一つである「DMBSFC06M」の品番が掲載されていることが認められる(ただし,被告は,本件口頭弁論終結時〔平成21年9月29日〕までに「Part NumberList」の項目を削除した〔乙3〕)。

イ.また,同サイトにおいて製品一覧を示したウェブページ(甲4−3)の「Slim ODD Motor」欄の「Sales Inquiry」(販売問合せ)として,「Japan」(日本)も掲げられており,海外ネットワークを示したページ(甲4−4)においては,「Sales Headquarter」として,日本での拠点(東京都港区<以下略>)が示されていることが認められる。

ウ.さらに,被告の日本語表記のウェブサイトにおいても,「Slim ODDMotor」を紹介するウェブページ(甲7)が存在し,同ページの「購買に関するお問合せ」という項目を選択すると,「Slim ODD Motor」の販売に係る問合せフォーム(甲8:「Section」欄に「Sales」と表記)が表示され,同ページの「製品に関するお問合せ」という項目を選択すると,「Slim ODD Motor」の製品に係る問合せフォーム(甲9:「Section」欄に「Tech」と表記)が表示されることが認められる。また,同サイトの海外事業場を紹介するウェブページ(甲10)において,日本における販売法人として東京と大阪の拠点が掲載されていることが認められる。


 [裁判所の判断]
@上記英語表記のウェブサイトは,被告の製造する製品の一つとして,「Slim ODD Motor」を全世界に向けて紹介するものであり,日本語で表記された「Slim ODD Motor」の販売・製造に関する問合せフォーム(甲7〜9)についても,プルダウンの選択次第で様々な製品に変更ができるものであり(乙7の1),品番や具体的な仕様についても何ら示されていない。そうであるから,同フォームが表示されていることをもって,被告物件につき譲渡の申出があったとは認められない。

Aまた,被告のウェブサイトの中には,被告物件のうち一部の品番(DMBSFC06M)が掲載されているページ(甲4−1−2)も過去には存在したが,同ページが英語で表記されていることに加え,同ページには当該品番のモータの定格電流,定格電圧,騒音及び振動が示されているにすぎず,同モータの他の具体的な仕様については何ら示されていないのであり,また問合せフォームにもリンクしていないのであるから,当該品番のモータの一般的な紹介にとどまるというべきであり,同モータについて,我が国において譲渡の申出があったとは認められない。

 Bしたがって,被告が,上記ウェブサイトにおいて被告物件の譲渡の申出をしたとは認められない。


 [コメント]
 譲渡の申出に関して司法が判断をした事例は未だ少ないために紹介しました。問い合わせフォームを持つウェブサイトであっても、何ページにも亘って複数の商品を紹介している場合に、必ずしも特定の商品の譲渡の申出とはならない、ということをこの判例は言っているようです。同じウェブサイト上で譲渡の申出をしている商品とそうでない商品とが一緒に掲載されているということがあるのかという疑問がなくはありません。もっとも裁判所としては譲渡の申出の意思が確実に読み取れる証拠がない限り、特許権の侵害と認定しにくいのかも知れません。もう少し判例の積み重ねを待つ必要があると思われます。


 [特記事項]
 
 
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