[事件の概要] |
@原告Xは、パチンコ機械に麻雀の上り手を組入れた遊戯機械を創作することを思いつき工夫をこらして、「麻雀ルールによって遊戯する球弾遊戯具」の考案について実用新案登録出願をし、実用新案登録を受けました。この登録に対して、本件考案はX単独で考案されたものでないという理由で、無効審決が出され、これが維持されたのが本件訴訟です。 A実用新案登録請求の範囲の内容は次の通りです。 “配牌球入れ、麻雀牌に模した三四種又はそれ以下の穴、入り球の表示装置、捨球切換機、自動打球準備機、カン表示装置、リーチ用閉鎖器及び捨球入れ器を設け、「カン」の場合を除いて入り球が常に一四ヶになる様、又この入り球が表示されるようにして、「配牌」、「リーチ」、「カン」、「流れ」及び上り手等麻雀ルールによる遊戯を可能ならしめるパチンコ遊戯器の構造” B原告Xは、前述したように実用新案登録の出願をしたものの、この出願は考案にかかる装置を現実に製作し試験したうえでされたものではなかつたので、出願後に独力で装置の試作を試みましたが、成功しませんでした。そこで原告Xは訴外Zに装置の試作を依頼し、Zを代表とする会社の従業員Yを中心として試行錯誤で試作を行いました。XもYと共同して試作を続けました。 |
[裁判所の判断] |
ア.特許法にいう発明は、技術的思想の創作であること勿論ですが、ここにいう創作とは単なる着想のみでは足りず、その着想が具体化されたものでなければならないことはいうまでもありません。 イ.本件のような機械の発明においては、ある技術的事項について得た着想が具体的な形態をとつた機械として実現しえないかまたはしていないものであれば、それは発明としては成立しえないかまたは未完成なものといわなければなりません。そうだとすれば、着想に基づき機械を試作し、着想の具体化の可否を検討することは、発明成立の一過程であると解することができます。そして、数人が共同してこのような行為をした場合には、その数人は共同して技術的思想の創作すなわち発明をしたものというべきです。 ハ.これ本件についてみると、原告Xは、パチンコ遊戯機に麻雀の上り手を組入れ、麻雀牌の模様を縦横に規則的に配列した表示部の表示を落下する打球により行わせ、一定の上り手を表出させようという本件発明の着想を有したものの、その具体化に当つてはYと相協力して共同してその具体化を完成したものであり、Yは、Xより本件発明の着想を告げられるやその具体化に協力することを約し、共同して具体化する意図のもとに訴外会社の従業員としてではありましたが、Xと共同してその具体化を完成しました。 ニ.従って、本件発明は、原告Xが単独でしたものではなく、Xが訴外Yと共同してしたものと認めるのが相当です。 |
[コメント] |
本件実用新案登録出願の出願日は昭和30年7月4日であり、現行法の適用前なので、現行法との取扱いとは異なる面があります。しかし共同発明に対する考え方は参考となると考えます。 |
[特記事項] |
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