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●平成17年(行ケ)第10683号 (拒絶審決取消請求事件・棄却)


特許出願人への意見書提出の機会/進歩性/拘束力/情報記憶カード

 [事件の概要]
(I)事件の経緯

(a)原告甲らは、

 平成5年12月16日、「情報記憶カードおよびその処理方法」の発明について特許出願(特願平5―343517号・特開平7―175901号)をし、

 平成15年6月27日、進歩性の欠如を受けて拒絶査定を受けたため、

 平成15年7月28日、当該特許出願の拒絶査定を不服とする審判を請求したが(不服2003―14440号事件)、「本件審判の請求は、成り立たない」旨の審決(甲「第1次審決」という。)が出され、

 平成16年5月11日、東京高等裁判所に第1次審決の取消しを求める訴えを提起したところ(平成16年(行ケ)第205号、その後知的財産高等裁判所に回付されて平成17年(行ケ)第10300号事件となる)、

 平成17年5月12日、第1次審決を取り消す旨の判決(甲6。以下「第1次判決」という。)が出されたため、特許庁が再び不服2003―14440号事件について審理し、

 平成17年8月1日、特許庁が「本件審判の請求は、成り立たない」旨の審決(以下「本件審決」という。)を出したため、

 この本件審決の取消を求めて提訴したものです。

(II)特許出願の請求の範囲

  「カード識別装置と無線で情報を授受することによって情報記憶カードを処理する方法であって、

 前記情報記憶カードが有する固定情報を読み取る第1の工程と、

 読み取られた前記固定情報が適正かどうかを判定する第2の工程と、

 前記情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、

 読み出された前記情報を処理して、前記情報記憶カードを使用した履歴情報を含む新たな情報を前記情報記憶カードに記憶させるとともに、前記履歴情報と同一あるいは少なくとも所定の部分を抽出した情報を無限ループ状に記憶させる第4の工程と

 を有することを特徴とする情報記憶カードの処理方法。」

(III)特許出願に対する審決の内容

 ア 判断その1

 本願発明は、特開昭62―249295号公報(以下「刊行物1」という。甲2)記載の発明(以下「刊行物1発明」という。)に基づき、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項により特許を受けることができない。

 イ 判断その2

 本願発明は、特開昭63―79170号公報(甲7の1)に記載された周知技術(以下「周知技術1」という。)とは、「情報記憶カードが有する固定情報を読み取る第1の工程と、読み取られた固定情報が適正かどうかを判定する第2の工程と、前記情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された前記情報を処理して、前記情報記憶カードを使用した履歴情報を含む新たな情報を前記情報記憶カードに記憶させる」とする点で一致し、

 @「カード識別装置と情報記憶カードとの間の通信に関し、本願発明が無線で通信を行うものであるのに対し、周知技術1においては接点接触により通信を行う」点及び

 A「本願発明が、履歴情報を無限ループ状に記憶させるとしているのに対し、周知技術1にはその点についての記載がない」点で相違するが、

 @の点は、当業者が容易になし得ることであり、

 Aの点も、刊行物1に記載の技術に基づいて、当業者が容易になし得ることであるから、本願発明は、特許法29条2項(進歩性の欠如)により特許を受けることができない。

 ウ 判断その3

 本願発明が、「情報記憶カードが有する固定情報を読み取る第1の工程と、読み取られた固定情報が適正かどうかを判定する第2の工程と、前記情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された前記情報を処理して、前記情報記憶カードを使用した履歴情報を含む新たな情報を前記情報記憶カードに記憶させる」とする点は、周知の技術(下記の文献参照)に属し、

 「カード識別装置と情報記憶カードとの間の通信を無線で行う」点及び「カードに履歴情報を記憶するとし、履歴情報は無限ループ状に記憶させる」点も、周知技術及び刊行物1に記載の技術に基づいて当業者が容易に導き出せることにすぎないから、

 本願発明は、特許法29条2項(進歩性の欠如)により、特許を受けることができない。

 特開平2―297297号公報(甲7の2)

 特開平2―280292号公報(甲7の3)

 特開平4―205093号公報(甲7の4)

 特開平4―692号公報(甲7の5)

(IV)特許出願に係る発明と発明との一致点・相違点(判断その1に対する)
〈一致点〉

 (ア) 刊行物1発明は、自動取引装置との間で情報を処理し、かつ、履歴情報をICカードに記憶させるようにしており、一方、本願発明は、カード識別装置と情報を授受することによって情報記憶カードを処理する点

 (イ) 刊行物1発明は、入力されたPINとICカードに記憶されたPIN情報を読み出して照合するようにしており、一方、本願発明は、情報記憶カードが有する固定情報を読み取る第1の工程と、読み取られた前記固定情報が適正かどうかを判定する第2の工程を有する点

 (ウ) 本願発明は、その第4の工程において、履歴情報を情報記憶カードに記憶し、履歴情報は無限ループ状に記憶させる点

zu

 〈相違点1〉

 カード識別装置と情報記憶カードとの間の通信に関し、本願発明が無線で通信を行うものであるのに対し、刊行物1発明は接点接触により通信を行うものである点

 〈相違点2〉

 本願発明が、情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された情報を処理して、新たな情報を情報記憶カードに記憶させる第4の工程を有するのに対し、刊行物1にはその点についての記載がない点
原告(特許出願人)の主張する取消事由

(a)原告は、取消事由1〜16を挙げています。このうち裁判所が判断を示した取消事由をまず説明します。

キ 取消事由7(第1次判決の拘束力違反)―判断その1について

 第1次審決(甲4)は、刊行物1には「残高を読取り、出金後にそれを更新するとの記載はないものの、そのような動作を行っているとするのが自然であり合理性がある」(4頁5行〜6行)と判断したが、これに対して、第1次判決(甲6)は、

 @「銀行カードを用いたATMによる自動取引処理において、口座残高は、銀行預金の取引の性質上、ATMが銀行カードのみに情報源を依存しこれから読み取ることはできず、銀行センター側のホストコンピュータが口座ファイルから読み取り、取引に関する処理を行った後、処理後の残高をATMに送信するものであることが明らかである。…そうすると、刊行物1のICカードを銀行カードとして用いるのであれば、ICカードから「残額」を読み取り、出金後にこれを更新するという動作をしているものではないといわなければならない。したがって、審決が、『残高を読取り、出金後にそれを更新するとの記載はないものの、そのような動作を行っているとするのが自然であり合理性がある。』と推断したことは誤りである。」(14頁19行〜15頁3行)、

 A「プリペイドカードの使用形態は、銀行カードとしてのICカードの使用形態と異なるから、プリペイドカードについての処理を、銀行カードとしてのICカードについての処理に適用することはできないといわなければならない。」(20頁25行〜21頁2行)、B「したがって、審決が、『情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された前記情報を処理して、前記情報記憶カードを使用した履歴情報を含む新たな情報を前記情報記憶カードに記憶させるとともに、前記履歴情報を無限ループ状に記憶させる第4の工程を有するとする点と格別な差異はない』と認定したことも誤りである。」(21頁22行〜22頁1行)と判断して、第1次審決を取り消している。

 しかるに、本件審決は、「銀行のICカードにおいて、残高を読み取り、処理した後、ICカードに書き戻すといったことは、本件出願前普通に知られていることである…から、…ICカードに記憶されている情報を読み出し、その読み出された情報を処理して、ICカードに記憶させるとすることは、当業者が容易になし得ることにすぎない」旨の判断をしている。この判断は、第1次判決の上記@の判断に反する。また、前記オのとおり、周知技術1の処理は、プリペイドカードとしての処理であるから、周知技術1を銀行カードに適用している本件審決の上記判断は、第1次判決の上記Aの判断にも反する。

 シ 取消事由12(意見を述べる機会の不付与)―判断その2について

 本件審決は、審査、審判の手続で引用されていなかった「周知技術1」と呼ぶ技術(甲7の1)を主引用例として、本願発明との一致点、相違点の認定をし、相違点2の判断においては、判断その1で主引用例とされた刊行物1を補助引用例として、容易想到の結論を導いている。これは新たな拒絶理由についての判断であるから、原告らに意見を述べる機会を与えることなくなされた本件審決は、特許法159条2項で準用する同法50条に違反する。

 ソ 取消事由15(意見を述べる機会の不付与)―判断その3について

 本件審決は、審査、審判の手続で引用されなかった文献を引用して周知技術と称し、これを主引用例として、本願発明との一致点、相違点を認定し、相違点の判断においても、新たな文献を周知例として引用して判断している。これは、新たな拒絶理由についての判断であり、原告らに意見を述べる機会を与えることなくなされた本件審決は、特許法159条2項で準用する同法50条に違反している。

(b)取消事由のうちで次のものに関しては、裁判所は判断を示していないため、ここでは取消事由の要旨を上げるに留めます。

ア 取消事由1(本願発明の要旨認定の誤り)―判断その1について

 本件審決は、本件特許出願に係る発明の第4の工程は、履歴情報を一旦書込読出領域に書き込む工程がなく、使用履歴記憶領域に記憶させる一つの工程のみから成ると解釈しているが誤りである。

 特許出願人の発明の第4の工程は、履歴情報を含む新たな情報を一旦書込読出領域に書き込む工程と、書込読出領域に書き込まれた情報を使用履歴記憶領域に無限ループ状に記憶させる工程という二つの工程からなるからである。

イ 取消事由2(一致点の認定の誤り1)―判断その1について

 特許出願人の発明は、上記アの通り、履歴情報を含む新たな情報を一旦書込読出領域に書き込む工程と、書込読出領域に書き込まれた情報を使用履歴記憶領域に無限ループ状に記憶させる工程という二つの工程から成るものであるが、刊行物1発明は、情報を無限ループ状に記憶させる一つの工程から成るものであるから、この点を一致点として認定したのは誤りである。

ウ 取消事由3(一致点の認定の誤り2)―判断その1について

 刊行物1発明のICカードは、ATMを用いて回線を介して銀行センターと接続されていて、銀行センターに備えられた元帳によって集中管理されるものであるのに対し、特許出願人の発明は、カード識別装置と情報を授受するのであり、センターとの情報の授受を行うものではないから、これを無視して「カード識別装置と情報を授受することによって情報記憶カードを処理する点」(一致点(ア))を一致点と認定したのは誤りである。

エ 取消事由4(相違点の認定の誤り)―判断その1について

 特許出願に係る発明は、@二つの工程によって二重の記憶を行う点とA無限ループ状に記憶する情報を書込読出領域に書き込まれた情報と同一の情報又はそれから所定の部分を抽出した情報のいずれにもすることができるものであり、これらの点で刊行物1とは異なっているから、これらの点を相違点として認定していない本件審決は、誤っている。

オ 取消事由5(進歩性の判断の誤り1)―判断その1について

 本件審決は、銀行のICカードにおいて、ICカードから残高を読みとり、処理した後、ICカードに書き戻すことはないにもかかわらず、これを周知技術と誤って認定し、その結果、相違点2についての特許出願に係る発明の進歩性の判断を誤ったものである。

zu

カ 取消事由6(進歩性の判断の誤り2)―判断その1について

 本件審決は、予備的な判断において、特許出願に係る発明の第4の工程が二つの工程から成るものとしても、「本件明細書の【0043】の記載を参酌すると、書込読出領域に書き込まなくてもよいのに、わざわざ1工程を費やして、書込読出領域に書き込むということであるから、増やさなくてもよい工程を増やしたからといって、そのことに格別な進歩性があるということにはならない」旨の判断及び「履歴情報を一旦記憶エリアに記憶し、その後履歴情報を別の記憶エリアに転送するといったことは、本件特許出願前に普通に知られていたことである(…特開昭63―201746号公報…)から、上記刊行物1記載発明においてもそのようにすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。」旨の判断をしている。
予備的判断とは

 しかし、本願明細書(甲1)の段落【0043】の実施例は、使用履歴記憶領域でのみ情報を記憶するものであって、使用履歴記憶領域に記憶する情報を書込読出領域に書き込まれた情報と同一の情報又はそれから所定の部分を抽出した情報のいずれにもすることができるというものではないから、特許出願に係る発明(請求の範囲に記載された発明)とは異なるものであり、その記載を参酌することはできないから、審決は誤りである。

 ク 取消事由8(意見を述べる機会の不付与)―判断その1について

 本件審決は、一つの公知文献にすぎない特開昭63―79170号公報(甲7の1)に記載の技術を「周知技術1」と呼んで引用しているが、これは周知技術ではなく、新たな拒絶理由である。

 また、第1次判決は、「本件発明が、第3の工程において、情報記憶カードに記憶されている情報を読み出し、かつ、第4の工程において、読み出された前記情報を処理して、情報記憶カードを使用した履歴情報を含む新たな情報を情報記憶カードに記憶させるのに対し、刊行物1記載の発明が、このような工程を有していない点が相違しているにもかかわらず、これを相違点として認定せず、その結果、その容易想到性についての判断をしていない。」と判断している。この第1次審決で判断されていないとされた点についても新たな拒絶理由となる。

 ところが本件審決は、以上のような点について、特許出願人に意見を述べる機会を与えることなくなされたから、本件審決は、特許法159条2項で準用する同法50条に違反する。

 ケ 取消事由9(本願発明の要旨認定の誤り)―判断その2について

 上記アで述べたとおりである。

 コ 取消事由10(相違点の認定の誤り1)―判断その2について

 周知技術1は、金額情報をデータメモリに記憶するだけであるから、特許出願人の発明は、周知技術1とは、@二つの工程によって二重の記憶を行う点とA無限ループ状に記憶する情報を書込読出領域に書き込まれた情報と同一の情報又はそれから所定の部分を抽出した情報のいずれにもすることができる点が異なっている。これらの点を相違点として認定していない本件審決は、相違点の認定を誤っている。

 なお、本件審決は、本件特許出願に係る発明の第4の工程が二つの工程から成る場合についての予備的な判断を行っているが、これについては、上記カで述べたとおりである。

 サ 取消事由11(相違点の認定の誤り2)―判断その2について

 周知技術1は、中央処理装置と回線接続していないオフラインの処理であるから、暗証番号を読み取って、中央処理装置において照合するということはない。したがって、周知技術1は、特許出願人の発明の第1の工程と第2の工程を有することはない。この点を相違点として認定しなかった本件審決の認定は誤りである。

 ス 取消事由13(本願発明の要旨認定の誤り)―判断その3について

 上記アで述べたとおりである。

 セ 取消事由14(相違点の認定の誤り)―判断その3について

 本件審決が引用している周知技術の文献及び刊行物1には、@二つの工程によって二重の記憶を行う点、A無限ループ状に記憶する情報を書込読出領域に書き込まれた情報と同一の情報又はそれから所定の部分を抽出した情報のいずれにもすることができる点についての記載はない。したがって、これらの点を相違点として認定していない本件審決は、相違点の認定を誤っている。

 なお、本件審決は、本件特許出願に係る発明の第4の工程が二つの工程から成る場合についての予備的な判断を行っているが、これについては、上記カで述べたとおりである。

 タ 取消事由16(審決の理由不備)―判断その3について

 本件審決は、プリペイドカードに関する四つの文献(特開平2―297297号公報[甲7の2]、特開平2―280292号公報[甲7の3]、特開平4―205093号公報[甲7の4]、特開平4―692号公報[甲7の5])を挙げておきながら、特許出願に係る発明の構成要件が四つの文献のどこに記載されているのかを指摘していない。これでは、審決に理由を付したとはいえず、特許法157条2項4号に違反する。

(VI)被告(特許庁)の反論

 (7) 取消事由7に対し

 第1次判決は、従来の銀行カード(磁気カード)を用いたATMによる自動取引処理について述べているだけで、ICカードを用いたATMによる自動取引処理について述べているわけではない。

 また、本件審決では、第1次判決において、第1次審決の「残高を読取り、出金後にそれを交信するとの記載はないものの、そのような動作を行っているとするのが自然であり合理性がある。」との判断が誤りであるとされたことを受けて、「本願発明が、情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された情報を処理して、新たな情報を情報記憶カードに記憶させる第4の工程を有するのに対し、刊行物1にはその点についての記載がない点」を相違点として抽出している。

 さらに、本件審決では、銀行カードの使用に関し、周知技術1(甲7の1)を例示して判断している。

 したがって、本件審決は、第1次判決の拘束力に違反しない。

(12)取消事由12に対し

 本件審決は、特許法29条2項違反を理由とするものであるから、拒絶査定と根拠法条が同じであること、特許出願時の技術常識や周知技術を認定するに当たって、原告らに意見を述べる機会を与える必要はないことからすると、本件において原告らに意見を述べる機会を与えなかったからといって、違法ではない。すなわち、

 本願明細書(甲1)の段落【0049】【0050】【0051】【0052】の記載からわかるように、本件特許出願に係る発明の技術的特徴は、情報記憶カードに履歴情報を無限ループ状に記憶する点にある。

 そこで、本件審決では、まず、周知技術から、「情報記憶カードに履歴情報を無限ループ状に記憶する」点以外の事項が、本件特許出願に係る発明の技術的特徴ではないことを示し、次に、当該発明の技術的特徴である上記の点については、先行技術(刊行物1)があるので、本件特許出願に係る発明は、周知技術及び先行技術により当業者が容易に発明できたものであると結論付けたものであり、審判の手続に違法性はない。 


 [裁判所の判断]
(I)裁判所は取消事由7、12、15に関して理由有りと認定し、審決を取り消しました。

(II)裁判所は取消事由7に関して次のように判断しました。

 (1) 特許に関する審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確定したときは、審判官は特許法181条2項の規定に従い当該審判事件について更に審理・審決をするが、審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから、再度の審理・審決には、同法33条1項の規定により、上記取消判決の拘束力が及ぶ。そして、この拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから、審判官は取消判決の認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない(最高裁平成4年4月28日第三小法廷判決・民集46巻4号245頁)。

 そして、前記のとおり、平成16年4月1日になされた第1次審決は、平成17年5月12日の知財高裁による第1次判決により取り消され同判決は確定したのであるから、本件審決を担当する審判官は第1次判決の有する拘束力の下で判断しなければならない。

 以上の見解に基づき、以下検討を進める。

 (2) 第1次審決(甲4)は、本願発明と刊行物1発明との相違点について、次のように認定した。

 「上記刊行物1記載の発明においては、取引者が自動取引装置で出金額を指定すると、出金後、取引内容をICカードのメモリに書き込むようにしており、その際、残高を読取り、出金後にそれを更新するとの記載はないものの、そのような動作を行っているとするのが自然であり合理性がある。そして、上記刊行物1記載の発明においては、ファイル領域ZTが一杯になると、レコード数1に戻って再度書き込まれるようにしているから、本件発明が、情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された前記情報を処理して、前記情報記憶カードを使用した履歴情報を含む新たな情報を前記情報記憶カードに記憶させるとともに、前記履歴情報を無限ループ状に記憶させる第4の工程を有するとする点と格別な差異はない。」(4頁3行〜12行)

 第1次審決の上記認定に対し、第1次判決(甲6)は、次のように判断して、審決を取り消した。

 ア 「銀行カードを用いたATMによる自動取引処理において、口座残高は、銀行預金の取引の性質上、ATMが銀行カードのみに情報源を依存しこれから読み取ることはできず、銀行センター側のホストコンピュータが口座ファイルから読み取り、取引に関する処理を行った後、処理後の残高をATMに送信するものであることが明らかである。

 そうすると、刊行物1のICカードを銀行カードとして用いるのであれば、ICカードから『残額』を読み取り、出金後にこれを更新するという動作をしているものではないといわなければならない。

 したがって、審決が、『残高を読取り、出金後にそれを更新するとの記載はないものの、そのような動作を行っているとするのが自然であり合理性がある。』と推断したことは誤りである。」(14頁19行〜15頁3行)

 イ 「被告は、銀行口座の真の残高をどこに持つかということは、様々な形態が考えられるのであって、必ずしも一義的に決まっているわけでなく、残高をICカードに記憶させることは、乙1ないし乙4に記載されているように、本件特許出願前にごく普通に行われていると主張する。」(15頁5行〜8行)

 「乙1ないし乙4のプリペイドカードの使用形態は、銀行カードとしてのICカードの使用形態と異なるから、プリペイドカードについての処理を、銀行カードとしてのICカードについての処理に適用することはできないといわなければならない。そうすると、乙1ないし乙4に、残高をICカードに記憶させることが記載されているとしても、これによって、銀行口座の真の残高をICカードに記憶させることがあると推認することはできない。」(20頁25行〜21頁4行)

 「したがって、銀行口座の真の残高をICカードに記憶させることがあると認めることはできないから、被告の上記主張は、採用の限りでない。」(21頁5行〜6行)

 ウ 「以上のとおりであって、審決が、『残高を読取り、出金後にそれを更新するとの記載はないものの、そのような動作を行っているとするのが自然であり合理性がある。』と推断したことは誤りであり、したがって、審決が、『情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された前記情報を処理して、前記情報記憶カードを使用した履歴情報を含む新たな情報を前記情報記憶カードに記憶させるとともに、前記履歴情報を無限ループ状に記憶させる第4の工程を有するとする点と格別な差異はない。』と認定したことも誤りである。

 そして、審決は、…本件発明が、第3の工程において、情報記憶カードに記憶されている情報を読み出し、かつ、第4の工程において、読み出された前記情報を処理して、情報記憶カードを使用した履歴情報を含む新たな情報を情報記憶カードに記憶させるのに対し、刊行物1記載の発明が、このような工程を有していない点が相違しているにもかかわらず、これを相違点として認定せず、その結果、その容易想到性についての判断をしていない。

 したがって、審決には、本件発明と刊行物1記載の発明との相違点を看過し、これについての容易想到性の判断をしなかった誤りがあるところ、この誤りは審決の結論に影響を及ぼすものと認められるから、原告ら主張の取消事由1は、理由がある。」(21頁20行〜22頁11行)

zu

  (3) 第1次判決の上記認定判断は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断であるから、前記のとおり、行政事件訴訟法33条1項にいう拘束力が生じ、再度の審決たる本件審決において、審判官はこれらの認定判断に抵触する認定判断をすることは許されないことになる。

  (4) そこで、次に、本件審決の認定判断が第1次判決の上記認定判断と抵触するものであるか否かについて判断する。

 ア 本件審決は、刊行物1発明のICカードを用いたシステムについて、次のように認定している。

 「知財高裁判決によれば、従来技術(特開昭50―62098号公報、特開昭61―249170号公報、特開昭62―117067号公報)から判断して、刊行物1に記載されている元帳には「残高」が記録されており、それが真の残高であると認定されている。

 ただ、これら従来技術はすべて磁気カードを用いたシステムであり、システム全体を制御する役割はセンタが果たすものである。一方、刊行物1記載の発明はICカードを用いたシステムであり、システム全体を制御するのは、刊行物1に記載されているように、自動取引装置(ATM)である。つまり、システム構成が刊行物1記載の発明と従来技術とは基本的に異なるものである。そして、例えば、暗証番号は、本件特許出願当時においてはセンタが記憶しているのに対し、刊行物1記載の発明では、ICカードに記憶されており、その照合をどこでするかも異なる。また、取引情報も、磁気カードを用いたシステムではセンタが作成し元帳に保存するに留まるのに対し、刊行物1記載の発明では、自動取引装置(ATM)が取引情報を作成し、ICカードに記憶するとともにセンタの元帳にも記憶するというように、異なるものである。さらに、残高についていえば、磁気カードを用いたシステムにおいては、センタが作成する履歴情報の一部(残高欄)として元帳に記憶されており、取引に際しては、その残高を用いて処理を行い、その処理結果を、また、履歴情報として元帳に記憶(その一部として残高を記憶)するようにしているのに対し、刊行物1記載の発明においては、履歴情報には残高欄がなく、したがって、履歴情報の一部を用いて取引処理を行うということにはならない。

 また、刊行物1の元帳に残高ファイルがあるとしても、残高ファイルがどこにあるかが問題ではなく、上記刊行物1記載の発明において、ICカードの残高(例えば、センタに記録された残高がA円であったものが、自動引き去り等により、B円になっていたとすると、ICカードの残高はA円のままであるので、センタとICカードでは残高が相違することになるが、ICカードによる取引(従来の通帳とカードとを一緒にATMに入れた取引形態と同じ)をすると、従来技術からの推測でいえば、ICカードの残高(通帳の残高)はA円からB円となり、センタに記録された残高とICカードの残高とは一致する。その後、取引に応じてC円となるが、その残高は、センタの残高にもC円、ICカードの残高(通帳の残高)もC円となる。つまり、ICカードによる取引の場合、センタに記録された残高とICカードの残高は一致する。)を読み取り、センタで記憶している残高と一致するかどうかとか、一致しない場合には、読み出した残高を書き換える処理をするとか、現在の取り引きに応じた残高処理をするとか、の処理をし、その後、ICカード及びセンタのそれぞれ残高に書き戻しするのか、それとも、センタの残高ファイルから、(全体を制御する)自動取引装置(あるいはセンタ)が残高を読み込み、(全体を制御する)自動取引装置(あるいはセンタ)が処理した後にICカードに書込むか、のいずれであるかということである。

 前者であれば、残高の読み出し、処理をし、書き戻しを行うという点(本件発明の第3行程及び第4行程の一部)に関し、上記刊行物1記載の発明と本件発明とに格別な差異がないということになるが、上記刊行物1にはどちらであるかという点が記載されていない。

 しかるに、銀行のICカードにおいて、残高を読みとり、処理した後、ICカードに書き戻すといったことは、本件特許出願前普通に知られていることである(必要ならば、例えば、特開昭63―79170号公報(特に第4頁左下欄第11行〜右下欄第7行)を参照されたい。以下、周知技術1という。)から、上記刊行物1記載の発明に適用して、本件発明のように、ICカードに記載されている情報を読み出し、その読み出された情報を処理して、ICカードに記憶させるとすることは、当業者が容易になし得ることにすぎない。」(5頁24行〜6頁下から4行)

 イ 以上のとおり、本件審決は、刊行物1発明のICカードを用いたシステムについて、 

 @ICカードの残高を読み取り、処理をした後に、ICカードに残高を書き戻すか、

 Aセンターの残高ファイルから残高を読み込み、処理をした後に、ICカードに残高を書き込むか、のいずれであるかであると認定している。

 しかし、第1次判決は、前記のとおり、「刊行物1のICカードを銀行カードとして用いるのであれば、ICカードから『残額』を読み取り、出金後にこれを更新するという動作をしているものではないといわなければならない。」、「銀行口座の真の残高をICカードに記憶させることがあると認めることはできない。」と認定しており、刊行物1のICカードから「残高」を読み取ったり、「(真の)残高」をICカードに記載することはない旨の認定をしているということができるから、本件審決の上記認定は、@はもとより、Aも、第1次判決の認定に反するものといわざるを得ない。

 したがって、本件審決における刊行物1発明のICカードを用いたシステムについての上記認定は、第1次判決の上記認定と抵触し、同判決の拘束力に反するものであって、許されないものである。

 そして、本件審決は、刊行物1発明のICカードを用いたシステムについての上記認定に基づいて、本願発明と刊行物1発明との「本願発明が、情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された情報を処理して、新たな情報を情報記憶カードに記憶させる第4の工程を有するのに対し、刊行物1にはその点についての記載がない点」という相違点(相違点2)について容易に発明することができたとの判断をしているのであるから、刊行物1発明のICカードを用いたシステムについての上記認定が本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

  (5) この点に対し、被告は、第1次判決は、従来の銀行カード(磁気カード)を用いたATMによる自動取引処理について述べているだけで、ICカードを用いたATMによる自動取引処理について述べているわけではないと主張する。しかし、第1次判決は、ICカードを用いた刊行物1発明について上記のとおり認定しているのであって、第1次判決は、従来の銀行カード(磁気カード)を用いた自動取引処理についてのみ認定しているということはない。

 また、被告は、本件審決では、第1次判決を受けて、「本願発明が、情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された情報を処理して、新たな情報を情報記憶カードに記憶させる第4の工程を有するのに対し、刊行物1にはその点についての記載がない点」を相違点として抽出していると主張する。確かに、本件審決において、この点は、相違点とされている。しかし、上記(4)のとおり、その相違点についての進歩性の判断において、第1次判決の拘束力に違反する判断がなされている。

 さらに、被告は、本件審決では、銀行カードの使用に関し、周知技術1(甲7の1)を例示して判断していると主張する。しかし、この点は、上記の拘束力違反の有無の判断を左右するものではない。

 したがって、被告の主張は採用できない。

  (6) 以上のとおり、本件審決の「判断その1」における認定は、第1次判決の拘束力に反し、審決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、原告ら主張の取消事由7は理由がある。
(III)裁判所は取消事由12に関して次のように判断しました。

  (1) 原告らは、本件審決の「判断その2」は、原告らに意見を述べる機会を与えることなくなされたから、特許法159条2項で準用する同法50条に違反すると主張するので、以下、検討する。

  (2) 審判官は、拒絶査定不服審判において、拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合には、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない(特許法159条2項で準用する同法50条)。

  (3) 本件審決の「判断その2」は、特開昭63―79170号公報(甲7の1)に記載された技術は、周知技術であるとして、これを本願発明と対比して、一致点、相違点を認定し、相違点については、刊行物1に記載の技術に基づいて当業者が容易になし得たなどと判断したものである(前記第3の1(3)イ参照)。

 この判断は、本件審決書の記載によれば、特開昭63―79170号公報(甲7の1)に記載された技術を「周知技術」と称しているものの、その実質は、特開昭63―79170号公報(甲7の1)を主引用例とし、刊行物1を補助引用例として、本願発明について進歩性の判断をして、進歩性を否定したものと解される。そして、甲10、11及び弁論の全趣旨によると、主引用例に当たる特開昭63―79170号公報(甲7の1)は、拒絶査定の理由とはされていなかったものである上、これまで、審査、審判において、原告らに示されたことがなかったものであることが認められる。

 そうすると、審判官は、本件審決の「判断その2」をするに当たっては、特許出願人である原告らに対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならなかったものということができる。したがって、原告らに意見を述べる機会を与えることなくなされた本件審決の「判断その2」は、特許法159条2項で準用する同法50条に違反するものであり、その程度は審決の結論に影響を及ぼす重大なものである。

  (4)ア これに対し、被告は、本件審決は、特許法29条2項違反を理由とするものであるから、拒絶査定と根拠法条が同じであること、特許出願時の技術常識や周知技術を認定するに当たって、特許出願人に意見を述べる機会を与える必要はないことからすると、原告らに意見を述べる機会を与えなかったとしても違法ではないと主張する。

 しかし、本件審決の「判断その2」は、上記のとおり拒絶査定の理由とはされていなかった文献を主引用例として進歩性を否定する判断をしたものである。

 このように主引用例に当たる文献が異なるにもかかわらず、拒絶査定と根拠法条が同じであるというのみで、特許出願人に意見を述べる機会を与える必要がないということはできない。もっとも、発明の持つ技術的な意義を明らかにするなどのために特許出願時の技術常識や周知技術を参酌した場合には、それらについて特許出願人に意見を述べる機会を与える必要がないが、本件審決の「判断その2」は、そのような場合に当たらないことは明らかである。

 イ また、被告は、本件審決では、まず、周知技術から、「情報記憶カードに履歴情報を無限ループ状に記憶する」点以外の事項が、本件特許出願に係る発明の技術的特徴ではないことを示し、次に、本件発明の技術的特徴である上記の点については、先行技術(刊行物1)があるので、本件特許出願に係る発明は、周知技術及び先行技術により当業者が容易に発明できたものであると結論付けたものであるとも主張する。

 しかし、本件特許出願に係る発明の技術的特徴がどこにあるにせよ、本件審決の「判断その2」が、拒絶査定の理由とはされていなかった文献を主引用例として進歩性を否定する判断をしていることには変わりはない。

 ウ したがって、被告の主張は採用できない。

(5) 以上のとおり取消事由12は理由がある。

(IV)裁判所は取消事由15に関して次のように判断しました。

 (1) 原告らは、本件審決の「判断その3」は、特許出願人である原告らに意見を述べる機会を与えることなくなされたから、特許法159条2項で準用する同法50条に違反すると主張するので、以下、検討する。

  (2) 本件審決の「判断その3」は、特開平2―297297号公報(甲7の2)、特開平2―280292号公報(甲7の3)、特開平4―205093号公報(甲7の4)、特開平4―692号公報(甲7の5)を掲げて、本件特許出願に係る発明が、「情報記憶カードが有する固定情報を読み取る第1の工程と、読み取られた固定情報が適正かどうかを判定する第2の工程と、前記情報記憶カードに記憶されている情報を読み出す第3の工程と、読み出された前記情報を処理して、前記情報記憶カードを使用した履歴情報を含む新たな情報を前記情報記憶カードに記憶させる」とする点は、周知の技術に属するとした上、「カード識別装置と情報記憶カードとの間の通信を無線で行う」点及び「カードに履歴情報を記憶するとし、履歴情報は無限ループ状に記憶させる」点も、周知技術及び刊行物1に記載の技術に基づいて当業者が容易に導き出せることにすぎないと判断したものである(前記第3の1(3)参照)。

 この判断は、本件審決書の記載によれば、特開平2―297297号公報(甲7の2)、特開平2―280292号公報(甲7の3)、特開平4―205093号公報(甲7の4)、特開平4―692号公報(甲7の5)に記載された技術を「周知技術」と称しているものの、その実質は、これらの文献を主引用例とし、刊行物1等を補助引用例として、本件特許出願に係る発明について進歩性の判断をして、進歩性を否定したものと解される。

 そして、甲10、11及び弁論の全趣旨によると、主引用例とされた特開平2―297297号公報(甲7の2)、特開平2―280292号公報(甲7の3)、特開平4―205093号公報(甲7の4)、特開平4―692号公報(甲7の5)は、拒絶査定の理由とはされていなかったものである上、これまで、審査、審判において原告らに示されたことがなかったものであると認められる。

 そうすると、審判官は、本件審決の「判断その3」をするに当たっては、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならなかったものということができる。特許出願人に意見を述べる機会を与えることなくなされた本件審決の「判断その3」は、特許法159条2項で準用する同法50条に違反するものであり、その程度は審決の結論に影響を及ぼす重大なものである。

  (3) これに対する被告の主張については、前記3(4)で判断したとおりである。

  (4) 以上のとおり取消事由15も理由がある。


 [コメント]
@本件では、第一次審決が取り消されて特許庁に差し戻された事案です。第一次判決においては、ICカード(銀行カード)の取引に関する主引用例(刊行物1)に関して、銀行口座の残高のデータをカードに残すような技術と認めることはできないと認定します。

Aしかしながら、差し戻された事件の審判官は、主位的判断として、取引情報(残高情報)をカードに記載するかどうかは主引用例に記載されていないとした上で、当該刊行物1の方法を実行するためには、

・ICカードから残高を読み取り、更新処理をしたのちに、カードに残高を書き戻すか

・情報センターの残高ファイルから残高を読み込み、処理をした後に、カードに残高を書き残すか

 のいずれかしかない、と判断しています。しかし、これは判決の拘束力に反すると判断されました。

Bまた予備的判断として、周知例を出発点として進歩性を否定する論理を立て特許出願人に意見書を提出する機会を与えずに出願を再度拒絶しましたが、いくら周知例という言葉を使っても実質的には主引用例としているのですから、不適法であることを免れません。


 [特記事項]
 
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