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●参考例2 603 F.3d 1325 スイープ(前進/後退)されたファンブレード


試みることが自明/設計変更/進歩性

 [事件の概要]
 Rolls-Royce(原告)の発明(USPATNo.6071077の請求項8)は、高バイパス比エンジン用のファンブレードです。

 その特徴は、発明の構成は、ハブから外方へ延びる複数のファンブレードのスイープ角度がハブからの距離により変化し、内部領域(S1〜S5)では前進、中間領域(S6〜S10)では後退、外部領域(S11)では前進することです(図2参照)。

 発明の目的は安定性の余裕を損なうことなくファンローターの効率性を高めることです。

本件発明(USP 6071077)



先行技術(USRE43710E)



 抵触審査で被告の先行技術(米国特許再出願071077号)から容易に発明できないと判断され、それを地方裁判所が覆し、控訴審に至りました。

 控訴審は、外部領域での前進形態は、高効率・低騒音・安定性という長年解決されなかった業界の要請(long felt but unsolved needs)を実現したと認定しました。
被告の発明は、外部領域でのブレードの前端を中間領域と同じスイープ角度とした場合と比べて前方へ遷移(translated forward)し、ブレードが衝撃64を遮断するようにスイープ角度を設定したものです。

 図2には、実線で表す被告発明のブレードが、点線で表す従来品のブレードより前方へ遷移し、端壁衝撃64(ケース42に空気が衝突して発生する衝撃波)をブレードが遮る様子が描かれています。

 被告発明の効果は、外部領域のブレードを前方へ遷移することで、空気がブレードを通過するときに発生する通過衝撃を、前方へ移動させて端壁衝撃と重なるようにし、2つの衝撃が別々にブレードに作用することを避けることです。

 被告は、“ブレードを前方へ遷移する”とはブレードの外部領域を(軸方向に対して垂直な面に対して)“前進”させることを含むし、そうではないとしてもブレードの外部領域を前進させた形態を試すことは容易である、と主張しました。

 [裁判所の判断]
 被告の明細書に“スイープ角度は半径方向の距離が増えることで増大しない”と記載されているから、“前方へ遷移する”という文言が、ブレードの後退形態のみならず前進形態まで含むという解釈は広すぎる、

 被告明細書は当業者が外部領域のブレードを前進させる形態を試みることの合理的な理由(Good Reason to Seek)を示しておらず、当該形態は“有限かつ公知“ではない。従って原告発明は先行技術から容易に発明できない、

 と判断されました。

 [コメント]
 被告明細書は、既存の後退ブレードと比較してスイープ角度が略零である図2の形態までブレードを前方へ遷移することで通過衝撃が端壁衝撃に重なると述べています。

 図2の状態からブレードをさらに前方へスイープさせたら、通過衝撃が端壁衝撃より前に出ることになり、被告発明の効果を阻害するのではないか、という疑問が生じます。

 従って外部領域での前進形態を試みる合理的な理由がないという判断は妥当でしょう。

 一見すると前進形態の翼やブレードは公知であるから「公知かつ有限」であると言えるようですが、そのように解釈するべきではありません。

 
 [特記事項]
 
 
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