[事件の概要] |
無効審判で、脚挿入用凹部内に押圧部を設けた基本構造を有するエアマッサージ機において、上記押圧部を、凹部36d、36eの底面側へ脚を押すように配置された一対の空気袋35a、35b、36a、36bとした本件発明(特許第3012780号)に対して、 上記基本構造を開示する主発明(公然実施された発明)、 脚部を両側から挟み付けるように押圧する一対の指圧頭28,29を有する甲第7号証(特公昭52−28517号) を引用して、進歩性が否定されました。 本件発明 甲第7号証 |
[裁判所の判断] |
甲第7号証は、太腿の両側を挟み付けることで指圧する方向に人体が逃げることを防止している、 人体を挟み付けて押圧する場合の態様は大きくいえば、脚部の略中心点に対する対称位置から押圧するか、そこから押圧位置を偏らせるかの2通りしかなく、 また脚部を左右対称に押圧するという態様を採用する場合、具体的には脚部を真横から押圧するか、押圧の位置を脚部の表側に偏らせるか、裏側に偏らせるかの3通りしかない、 また甲第7号証を甲第2号証に適用するに際し、脚が凹部底に押しつけられるように押圧位置を選ぶことは「押圧する方向に脚が逃げないようにする」という甲7号証の目的に適う、 として、引用文献から本件発明に容易に到達できると判断されました。 |
[コメント] |
本判決は、特許明細書を作成する実務家の間で大きな話題となったケースです。 特許法は技術的思想を保護するから、「凹部の底部へ押し付ける様に脚の押圧箇所を設計する」思想が引用文献にないことは進歩性の判断で尊重されるべきであります。 思想的な裏付けがなく、脚の中心位置とそこからずれた位置の2通りから押圧箇所を選ぶのは容易というのは論理の飛躍があると考えます。 コロンブスの卵の例では、卵を立てるのには卵の端を割る態様と割らない態様の2通りしかなく、一方を選ぶのは容易であるとは言えません。 選択肢の発見に困難性があるからである。甲7号証の指圧マッサージでは人体に対して垂直にツボを押すのが普通であり、人体の中心から離れた位置を押すという発想は生じません。 |
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