[事件の概要] |
競技場におかれたスロットルマシンは、一定以上のメダルが払い戻されるとマシンを停める打止装置を有します。打止の解除は作業員が手動で行っていました。 そこで被告は、スロットルマシンの打止装置に、一定時間経過後に自動的にリセット信号を発信するリセット信号発生回路を接続した打止解除装置を考案し、実用新案登録を受けました(実用新案登録第第2060756号)。 その無効審判においてパチンコの打止装置の打止を一定時間後に解除する技術が引用されたが、「スロットマシンの打止装置に、一定時間後にリセット信号を発信する」ことを示唆していないとして、請求を棄却しました。 原告は、本訴で次の理由でパチンコゲーム機の打止解除装置をスロットルマシンに転用することは極めて容易であると主張しました。 第1に、パチンコゲーム機とスロットルマシンとは同じ店に設置されることが多く、前者が打止自動解除可能なのに後者がそうでないなら、店側としては不都合であり、自動解除を可能とするようにメーカーに要請するから、パチンコの打止解除技術がスロットルマシンのメーカーに知らされることになる。 第2に、パチンコゲーム機とスロットルマシンとは、同じ店舗の占有面積を奪い合う競争関係にあり、一方の技術が他方に極めて知られやすい関係にある。 |
[裁判所の判断] |
パチンコゲーム機とスロットルマシンとは同じ遊技ゲーム機であり、計量対象がパチンコ玉とメダルとで異なるとしても、装置自体は打止装置に電気的に接続するものであり、打止後一定時間にリセットする技術を転用することは容易です。
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[コメント] |
打止後一定時間でリセットという考案の本質に関わる相違点がない以上、上記転用は容易であると考えられます。 判決は転用の難易を技術的な観点の類似性で判断すべきと説いています。 従って技術分野の共通性が一応立証されれば、上記観点を外れて経済的な事情を述べても無駄と留意すべきです。 判決は、遊技用ゲームという「用途」の共通する範囲を技術分野の範囲と解釈しているようです。これについては今後の研究課題としたいと考えます。 |
[特記事項] |
特許庁審査基準に引用された事例 |
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