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●事例4C 平成12年(行ケ)238号(炭素膜コーティング飲料用ボトル事件


別ルート論/技術的課題の共通性/動機付け/進歩性

 [事件の概要]



 プラスチック容器は、酸素や二酸化炭素のような低分子ガスを透過する性質を有し、低分子有機化合物が内部に収着してしまうという問題があります。

 そこで原告は、「プラスチック材により形成された容器の内壁面に、硬質炭素膜20Bが形成されていることを特徴とする、炭素膜コーティングボトル容器」という発明を出願しました(平成6年特許願189223号)。

 本願の拒絶査定不服審判では、プラスチック製容器の内壁面に酸化ケイ素膜を形成した引用文献1に、プラスチック製器具の内壁面に硬質炭素膜であるダイヤモンド状炭素膜を形成する技術を開示する引用文献2を適用することで、本件発明の構成に想到することが容易であると判断され、拒絶審決が出されました。

 原告は、引用文献1の課題(従来ではPET容器のガス透過性を低減するためにポリ塩化ビニデレンなどでコーティングしていたが、容器を回収し、溶融して再利用する際にこうした物質が混入することは好ましくない)は本件発明の課題と異なるなどと主張しました。

 [裁判所の判断]
 本件発明の構成に想到するための動機付けは、本件発明の課題以外に存在しないという前提は認められない、

 一般に異なる動機で同一の行動をとることは珍しいことではない。発明もその例外ではなく、異なった課題の解決が同一の構成により達成されることは、十分あり得ることである、

 と判断されました。

 [コメント]
 本件発明とは別の課題に基づく論法で発明の構成に想到することが容易という論理付けの先例に関しては、例えば参考例4@があります。

 しかしながら、この種の判例は、ブレーキディスク同士或いは容器同士という如く先行技術の分野が同一又は近接する場合に成立していることに留意すべきです。

 構成が同じで課題が異なる場合でも、その課題の相違が用途の相違に至るときには結論が逆になることがあります。

 →平成18年(行ケ)第10227号(シワ形成抑制事件)を参照。

 [特記事項]
「特許研究」NO.40(2005/9)「進歩性判断における論理づけ」の紹介事例
 
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