商標の普通名称化
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自他商品識別力/商標調査・商標調査/商標出願 |
2014年10月14日の読売新聞の記事ですが、ラッパのマークで知られる胃腸薬「セイロガン糖衣A」を製造・販売する大幸食品が、同業者の商品の商品名(「正露丸糖衣S」)及びパッケージが似ているとして、パッケージの使用差止の訴訟の上告審で、その訴えが退けられたという報道がありました。 この裁判の原審では、「正露丸」は普通名称に過ぎない旨の見解が示されています。 ご存じの方も多いと思いますが、この医薬品は日露戦争当時に「征露丸」という商品名で知られ、軍隊で使用されていました。やがて戦争が終わって国際信義の面からこの商品名はまずかろうという理由で、「正露丸」に改められたそうです。大幸食品は1954年に「正露丸(セイロガン)」について商標出願をして商標登録を受けましたが、1955年には同業者が商標登録無効審判を請求し、特許庁は登録維持の審決を出しましたが、東京高裁は、“「正露丸」の語は、商標登録時、整腸剤の一般的な名称として国民に認識されていたものというべき”として審決を取り消す判決が出され、これが最高裁判所で確定して、登録は無効となりました。 商標の機能は、事業者が自分の商品と他人の商品とを需要者に識別させること(自他商品識別力)にあります。しかしながら、複数の事業者が同じマーク(標章)を各人の商品に使用すると、商標の機能は弱められ、ついには普通名称も同然となります。 従って、新たに商標出願をする場合には、商標調査の際に上記自他商品識別力の有無も判断することが重要です。同じ商標を複数の同業者が未登録で使用しているならば、既に識別力を喪失している可能性があります。しかし、そうした業界の事情は、我々弁理士よりも各業界の事業者の方の方が断然詳しいのが一般です。 新たに商標出願(商標申請)をしようとする方には、上述のような事情があるときには、事前に弁理士に商標相談をして、その事情に対して意見を求めるようにして下さるようにお願いしたいと思います。 |
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