大学発明と特許収入の格差
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大学の特許出願の商業化/特許調査/進歩性 |
9月29日の報道で興味深い記事を見つけました。新聞社の調査によると、全国の主要大学の2013年の特許収入は2割増であるが、特許出願の件数は1%減、そして特許収入の面で上位数校とそれ以外の大部分の大学とでは大きな格差があるというのです。 それら大部分の大学では、特許1件当たりの収入が数万円程度であって、特許出願にかかるコストを考えると対費用効果が低い、要するに割に合わないというという訳です。特許庁では、いわゆるアカデミックディスカウント、すなわち大学等や大学等の研究者を対象とする出願審査請求の手数料の軽減及び最初の数年分の特許料の軽減措置を導入して、大学の特許出願への意欲を鼓舞しています。それでも特許出願の発明が商業化されなければ、特許で稼ぐという予定も絵に描いた餅です。一般の企業の場合には、実施したいアイディアを完成したら特許調査をして進歩性の要件をクリアすれば特許出願すればよいのです。しかし、大学の場合は、特許をとって誰に実施許諾するか或いは譲渡するか、ということまで考えなければならず、特許出願に至るまでのハードルが高いわけです。アカデミックディスカウントだけでは、特許出願の奨励策として十分でないかもしれません。 対費用効果でもう一つ想うのは、大学の使命と商品の商業化の兼ね合いです。大学は学問の発展を主目的とするので、学術的に独創性の高い研究が評価されます。そうした研究成果が直ちに商業的な成功に繋がればよいのですが、企業にとってはそれが必ずしも魅力的でない場合があります。特許収入が多い大学は、TLO(技術移転機関)など企業への技術移転体制が充実しているということです。おそらく同時に企業がどういう特許を求めているのかということに関しても情報収集しているのではないかと思います。 大学の関係者も特許収入が少ないことに危機感を感じておられるようで、米国大学特許出願に関する或るレポートでは、米国では大学の研究成果を活用して多数の新製品が市場に投入されている、日本とは何故違うのかということを問題提起しています。その理由はいろいろあるのでしょうが、一つには知財に関する教育ということにあるのではないかと、私は思っていますが、その話はまた後日。 |
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