今岡ニュース

2014年11月13日(木曜日) 特許ニュース

特許不実施主体と産業の発達(その2)


特許不実施主体/特許出願/特許権

 前回に続いてNPEによる不実施の問題について論じます。

 歴史的には、特許権者の不実施は、特許品の輸入という形で国際問題となりました。或る先進国での特許出願に基づいて、複数の開発途上国に対してパリ条約優先権を利用して特許出願を開発途上国に特許出願して、それぞれ特許を取得し、そして開発途上国では特許品を全く製造せずに、先進国で製造した物を輸入するということが多かったそうであります。特許権者の側からするとその方が効率的なのでしょうが、開発途上国としてはたまったものではありません。こうした国では、特許発明の不実施(これらの国の解釈では専ら特許品を輸入する場合を含む)に対して特許の取消など厳しい制裁が取られるようになりました。こうした制裁に一定の枠をはめるために、工業所有権の保護に関するパリ条約に取決め(5条A)が設けられました。

 我国でもパリ条約5条Aに基づいて、特許法第83条の規定が設けられていますが、これは、特許権の取消のような厳しい措置ではなく、一定期間の不実施を根拠として通常実施権の設定の裁定を行政機関に請求できるという内容です。これは、特許出願人は、それなりの労力を費やして特許出願したのだから実施の需要があれば実施している筈であるという前提の下で、不実施に対する制裁は実施権の設定で足りるという考え方です。しかしながら、特許制度の黎明期ならばともかく、そうした前提が今日常に正しいかというと疑問を感じます。例えば自らは実施せずに他人が事業展開をしそうな技術分野に先回りして特許出願をしておくという可能性もないではないからです。

 実施化に努める企業をもっと保護してもよいと思うのですが、現実の特許制度は必ずしもそうなっていません。とすれば、企業に寄り添う立場の弁理士が特許出願人の事業活動に気を配り、他人に重要な特許を取られるリスクを軽減していくしかないでしょう。個人的には、弁理士という職分はお百姓さんに似ると思っています。彼らが種子から野菜や果物を育てるように、我々は発明者が創出したアイディアをさらに育て、よりよく実施化できるように形を整えるのです。そしてそうしたアイディアが特許となり、商品化されて例えば店頭にならぶのを見ると、これに勝る喜びはありません。


 
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