今岡ニュース

2014年12月17日(水曜日) 特許ニュース

超電導リニア新幹線の成功に看る、諦めない心


超電導/特許出願

 鉄のレールと車輪で走行する粘着式の高速列車に関しては、現在日本の新幹線やドイツのICEが鎬をけずっていますが、超電導磁石を利用して列車を浮上させ、摩擦力に頼らずに高速走行する超電導リニア新幹線が2027年から実用化する予定です。

 こうした日本の新技術に対して「大きな脅威となる」と中国メディアが論評しているという報道がありました。中国は“独自に開発した”とする高速鉄道技術を日本・ヨーロッパ・アメリカへ特許出願していますが、粘着式の走行方式では、高速になるほど、レールと車輪との摩擦力が低下し、加速が難しくなるからです。

 もっとも超電導技術でも実用化に向けて大きな困難がありました。1990年代に超電導リニア新幹線の開発陣を悩ませた、クエンチという現象です。クエンチとは、超電導コイルの一部が超電導状態から抜けて通常電導状態へ切り替わること、すなわち超電導状態の喪失をいいます。いきなり超電導磁石の磁力が失われ、車体の推力だけでなく、浮力も失われるのです。最悪な場合には、車体が路面に落下する可能性があります。

 我が国の技術開発陣は、クエンチの原因が超電導磁石の温度変化などにあることを見い出しました。超電導は、物質の温度を極低温に下げることで電気抵抗が零になる現象です。電気抵抗が零になるから、電流が永久に電磁石中を流れ続け、磁力が維持されるのです。そして車両の走行中に振動が起きたり、過大な電流が流れたりすると、クエンチが発生し得るのです。クエンチ対策を講ずることで、超電導リニア新幹線は大きく実用に近づきました。

 超電導リニア高速車両の実用化に関しては、日本の他にドイツ企業も取り組んでいましたが、結局残ったのは日本だけです。超電導リニア新幹線が営業走行するのはまだ先の話ですが、それが実現すれば、日本の技術者の諦めない心が導いた成功といえましょう。


 
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