産学共同の特許出願と発明者の認定の問題
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特許出願/発明者の認定/進歩性 |
去る11月下旬、産学共同の特許出願について、関西の中小企業が異業種である医療分野において大学医学部と共同しながら新製品を開発し、特許出願に至ったケースが数例に及び、注目を集めているという報道がありました。 1990年代に導入された産学連携政策の結果として、産学共同の特許出願による特許件数は順調に増え、大学技術の社会還元は実現されつつあります。 しかしながら、大学がこうして特許出願を続けていくためには、特許出願に伴う法的問題を把握し、関係者に対して周知せしめることが必要であると考えます。そうした問題の一つが、発明者の認定の問題です。特許法は、「特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。」と定めています(第38条)。複数の人が共同で発明したときには、各人は共同発明者として、特許を受ける権利を共有することになります。この共同出願の要件に違反したときには、特許出願について拒絶査定が出され、或いは特許無効となる可能性があります。また特許出願の願書に記載されなかった発明者は、特許を受ける権利の持分に応じて、移転請求権(特許法第74条)を行使できます。 特許出願の客体的要件(新規性や進歩性など)の場合と異なり、特許出願の主体的な要件である発明者の場合に関しては、原則的に補正書による発明者を追加するということが難しいので、特許出願の前に予め注意することができます(過誤によって発明者の名前が欠落した場合は発明者全体の「変更」が認められますが、これは別の問題です)。 共同出願の要件において問題なのは、発明者の認定が必ずしも容易ではないということでしょう。例えば技術的な問題の解決に対して、Aが課題解決のための着想を示し、Bがその課題を解決するための具体的な手段を提案したような事例です。発明者の認定に関して疑義があるときには、その点に関して特許相談をすることが推奨されます。 |
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