意匠権の活用
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意匠出願の願書・図面と特許出願の明細書 |
我々弁理士が所属する弁理士会では「Patent」という雑誌を発行しておりますが、本年の9月分で意匠の特集をしていました。その中で「意匠権活用事例の検討」という記事があり、意匠権を特許権や実用新案権とともに併用することに関して解説していました。 その記事によると、特許出願とともに意匠出願をすることの利点として、次の点を指摘していました。 イ.登録の容易性 意匠出願は、特許出願のように明細書の記載要件や進歩性の要件を要求されないので、比較的登録され易いと考えられます。もちろん意匠出願の願書や図面の作成も簡単ではなく、単に相対的・比較的にという意味ですが。 ロ.2種類の権利を重ねて手厚く保護を図れる。 発明は、技術的思想の創作であり、意匠は、物品の外観に係る美的創作ですので、一つの製品に保護を重ねることができます。 ハ.特許権の穴を意匠権で補完することができる。 特許権は、一つの広い請求項、或いは比較的狭い複数の請求項によって漏れなく権利化を図ることが理想ですが、先行の公知技術次第で、多数の穴の開いた権利しかとれない可能性があります。特許権と重ねて意匠権をとることで特許権の穴を埋めることができます。 確かに、訴えられる側からすると、一つの係争物に対して特許権及び意匠権の束で攻めてこられるのは嫌なものです。当事者の異なる訴訟であれば、特許権侵害の訴訟は勝って、意匠権侵害の訴訟は負けたというと、一勝一敗ということになります。しかしながら、被告が同一人である場合には、2つの攻撃を撃退しないと意味がありません。特許権のみの侵害訴訟では、技術的範囲の属否とともに特許無効理由を探すのが常道ですが、特許権と意匠権とを併用した攻撃では、特許無効理由を探すとともに、係争物が意匠権の権利範囲に属するのかも考えなければいけません。従って、特許権と意匠権との連携攻撃は、相手へのプレッシャーが大きいのです。 従って、一つのアイディアに特許権と意匠権とを持っていることの意義は大きいのです。 |
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