IGZOの商標登録に対して無効の判断
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記述商標/商標出願/特許出願 |
最近新聞報道でも話題になりましたが、液晶ディスプレーなどを指定商品とする、シャープの商標登録「IGZO」に対して知的財産高裁が先月無効審決を支持する決定をしました。シャープはこれに対して上告せず、これにより判決が確定することになりました。 その理由というのは、IGZOとは、半導体の原料である酸化物「酸化インジウム・ガリウム・亜鉛」を表すものであり、商品の特性(品質・効能・原材料など)を普通に表される標章のみからなる商標(いわゆる「記述商標」)であるから、商標法第3条第1項第3号違反であるということです。 シャープは、平成23年6月に「IGZO」の商標出願を行い、同年10月に登録査定となり、同年11月に設定登録を受けました。 判決文によると、上述の酸化物は、平成7年の国際会議で「『酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)』とよぶ新型酸化物」として照会されました。その2010年の日経新聞などで「酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)」のような物質名と標章とを並記する形で新規物質として紹介するような記事がありました。また平成17年から平成23年10月25日までの7年間に関して特許調査をしたところ、単独で「IGZO」という表記をしている特許出願が6件ありました。 本件での特殊性は、IGZOは、一般需要者の間では本件酸化物を表すものとして広く認識されておらず、取引者の間でのみそのように認識されていたことです。しかしながら、競業者を含む取引者一般に、その商品の原材料として認識されているものを、特定の取引業者に独占させることは妥当ではなく、上記の判決に至ったものです。 商標出願の経緯からすると、すんなりと登録査定になったので、通常の商標調査で調べる資料の範囲では登録の見込みがあると思われたのでしょう。商標の登録性の判断でも、特許出願等の公報類が引用されるというのも、技術革新の進んだ現在の社会事情を反映していると言えるかもしれません。我々弁理士としても教訓となる事例であります。 |
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