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商標かわら版
判例詳細
今岡憲特許事務所


●異議2014−900320


中間部分の評価/商標の近似性/商標出願

 [異議申立人の主張]
@本件商標と引用商標1及び2との類否について

 ア 称呼について
 本件商標は,「鳥」の文字がロゴ化された図形と漢字「二郎」が横書きで表記されたものであるから,明らかに「トリジロー(トリジロウ)」の称呼を生ずる。

 これに対し,引用商標1は,「スミビクシヤキ トリジロー」との称呼が生じるが,第43類「串焼きを主とする飲食物の提供」の指定役務においては,その商標の構成中,「炭火串焼」の文字は普通名称を示すことから,商標の要部は「鶏ジロー」であるため,「トリジロー」の称呼が生ずるのが自然である。

 一方,引用商標2は,具体的に考察すると,「鶏ジロー」及び「炭火串焼」は,互いに字体が顕著に異なることから,それぞれが視覚上分離されて看取されるものである。

 そして,「鶏ジロー」の文字は,「炭火串焼」の文字に比して,かなり大きく書されているものであるから,特に,看者の目を惹きやすい部分であると認められる。また,「鶏ジロー」の文字の「ロ」の中に「TORIJIRO」とローマ字が記載されている。さらに,文字部分全体を称呼するときは「スミビクシヤキトリジロー」と冗長に至るものであり,かつ,文字部分全体を称呼,観念しなければならない格別の事情を見いだし得ない。

 そうすると,引用商標2は,大きく表された「鶏ジロー」の文字から生じる「トリジロー」の称呼をもって取引に当たると解するのが相当である。

 したがって,本件商標と引用商標1及び2は,いずれも「トリジロー」の称呼が生ずるため,明らかに称呼が同一である。

 イ 観念について
 本件商標から観念が生ずるとすれば,「鳥」の文字からそのまま鳥を想起し,「二郎」の文字からは2番目に生まれた人や動物の名を想起することから,その指定役務である「飲食物の提供」においては何らか鳥にちなんだ次男坊的な名称であることを想起する。

 これに対して,引用商標1及び2から観念が生ずるとすれば,「鶏」の文字からそのまま鶏を想起し,「ジロー」の文字からは2番目に生まれた人や動物の名を想起することから,本件商標の指定役務においては,何らか鶏にちなんだ次男坊的な名称であることを想起する。

 したがって,本件商標と引用商標1及び2は,いずれも何らかの鳥又は鶏にちなんだ次男坊的な人,又は動物の名称の観念が生ずるため,明らかに観念も同一である。

 ウ 外観について
 本件商標は,「鳥」の図形と「二郎」の漢字を組み合わせた「鳥二郎」と構成されるのに対し,引用商標1及び2の「トリジロー」と称呼される部分は,「鶏」の漢字と「ジロー」の片仮名を組み合わせた「鶏ジロー」と構成され,外観が互いに異なるものとなっている。

 しかしながら,本件商標の「鳥」の文字と,引用商標1及び2の「鶏」の文字とは,実質的に同一の文字である。また,本件商標の「二郎」の漢字と,引用商標1及び2の「ジロー」の片仮名とは,漢字かその読み方の差異でしかない。このため,本件商標と引用商標1及び2の外観は,大きな差異を有する程のものではない。

 エ 取引の実情について
 本件商標と引用商標1及び2に係る指定役務「飲食物の提供」では,「トリジロー」と称呼されるものについては識別力を十分有するものであり,称呼が同一であると一般の需要者をして出所の混同を生せしめることは明らかである。

 したがって,本件商標と引用商標1及び2は,外観の差異が多少存在するとしても,称呼及び観念が同一である以上,出所混同を生せしめるものであっで,互いに類似するものである。

A本件商標と引用商標3との類否について
 本件商標は,その構成中の「鳥」の部分が「鶏」を想起させる特殊な図形であること,それに続く「二郎」の文字よりも大きく表示されていること,「二郎」の文字が概ね平凡な書体で表記されておりロゴ全体における創作性が乏しく小さな印象しか与えないことに鑑みると,一般の需要者の認識からして明らかに図形化された「鳥」の部分が商標の要部となる。

 これに対し,引用商標3は,「鶏」を想起させる「鳥」の図形である。

 本件商標の要部である「鳥」の図形と,引用商標3の「鳥」の図形とを比較すると,下半分は,いずれも鳥の下半身をイメージするように構成されているが,ほとんど同一といってよい構成となっている。

 一方,上半分は,鳥の上半身をイメージするように構成されているが,目と思われる部分(本件商標は丸点,引用商標3は横線)や,口ばしと思われる部分(本件商標は三角形,引用商標3は太線)の差異はあるものの,顔の輪郭と思われる横長の楕円形状はほとんど同一の構成となっている。

 したがって,上半身及び下半身を含む全体として考察すると,本件商標の要部である「鳥」の図形と,引用商標3の「鳥」の図形は,外観上,互いに類似するものである。


 [裁判所の判断]
@本件商標と引用商標1及び2との類否について
(イ)本件商標と引用商標1及び2の類否について検討するに,両商標の外観は,それぞれの構成態様に照らし,明らかな差異を有するものであるから,外観上,明確に区別できるものである。

(ロ)そして,本件商標と引用商標1及び2からは,いずれも「トリジロー」の同一の称呼を生ずるものである。

(ハ)また,本件商標と引用商標1及び2は,特定の観念を生じないものであるから,比較することができず,類似するとはいえないものである。

(ニ)そうとすれば,本件商標と引用商標1及び2とは,同一の称呼において類似するとしても,外観において明確に区別できるものであって,観念において類似するとはいえないものであるから,両商標を同一又は類似の役務に使用しても,その役務の出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標というべきである。

A本件商標と引用商標3との類否について
(イ)本件商標は,デザイン化した「鳥」の文字と「二郎」の文字とが同色で横一連にバランス良く矩形図形内に配置されており,ここから「鳥」の部分又は「二郎」の文字部分を分離して観察すべき特段の事情は見いだせない。

(ロ)本件商標と引用商標3との類否について検討するに,両商標の外観は,明らかな差異を有するものであるから,外観上,明確に区別できるものであり,本件商標から生じる「トリジロー」の称呼と引用商標3から生じる「トリ」の称呼とは,語尾における「ジロー」の音の有無の差異により,明確に聴別できるものである。

(ハ)また,本件商標は,観念を生じないものであるから,引用商標3と比較することができず,類似するとはいえないものである。

(ニ)そうとすれば,本件商標と引用商標3とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

(ホ)申立人は,本件商標から,「鳥」の図形部分を要部として引用商標3と比較し,「下半分は,いずれも鳥の下半身をイメージするように構成されているが,ほとんど同一といってよい構成となっている。一方,上半分は,鳥の上半身をイメージするように構成されているが,目と思われる部分(本件商標は丸点,引用商標3は横線)や,口ばしと思われる部分(本件商標は三角形,引用商標3は太線)の差異はあるものの,顔の輪郭と思われる横長の楕円形状はほとんど同一の構成となっている。したがって,上半身及び下半身を含む全体として考察すると,本件商標の要部である「鳥」の図形と,引用商標3の「鳥」の図形は,外観上,互いに類似するものである。」旨を主張している。

(ヘ)しかしながら,本件商標のデザイン化した「鳥」の部分は,まるで,象形文字のように表されており,その頭部にあたる部分は楕円状に表され,嘴にあたる部分は,頭部の左上に,上を向き,かつ,尖った形状で表され,また,「目」にあたる部分は,卵型に表されている。

(ト)これに対し,引用商標3のデザイン化した「鳥」の文字の上部は,「鳥」の漢字の「白」の部分を,全体として楕円状にデザインして表されたものということができる。

(チ)そうとすると,本件商標のデザイン化した「鳥」の部分と引用商標3とは,下半分において近似した印象を与えるとしても,上半分において,上記のような差異を有するものであって,その構成全体としての表現方法が相違し,視覚上,異なった印象を与えるものであるから,これらを時と処を異にして離隔的に観察しても,外観において相紛れるおそれはないものと認められる。

(リ)本件商標は,上記(イ)のとおり,その構成全体が一体のものとして把握されるものであって,その構成中のデザイン化した「鳥」の部分のみが要部として抽出されるものではないが,以上のとおり,本件商標のデザイン化した「鳥」の部分と引用商標3とを比較したとしても,両者は,非類似のものというべきである。


 [コメント]
@引用商標1及び引用商標2の類否判断に関して特筆すべきは、「同一の称呼において類似するとしても,外観において明確に区別できるものであって,観念において類似するとはいえないもの」であるから、全体として非類似という結論を導いていることです。

A現在の審査基準は「商標の類否の判断は,商標の有する外観,称呼及び観念 のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない。」と定めています。これは、いわゆる氷山事件の判例を取り入れたものです。しかしながら、類似の3つの要素、特に称呼が同一である場合には、全体として類似とされる場合が非常に多く、それだけに本件判決は商標の類否判断の研究に重要な知見を与えてくれそうです。

B引用商標2は、鳥の文字と鳥のデザインとを横にならべ、下に「ジロー」という文字を横書きし、さらに「ジロー」の「ロ」を四角の図形としてその中にさらに文字を書き込むという外観的な特徴を持っていますが、そうした点が類否判断に影響を与えたとは言えないようです。何故なら引用商標2だけでなく引用商標1も非類似とされているからです。

C異議決定では、「外観において明瞭に区別できる」と述べていますが、どういう趣旨でそういっているのかもう少し詳しく説明して貰いたいものです。

D引用文献3との類否判断では、本件商標がデザイン化された「鳥」の文字と「二郎」と文字とを切らずに全体観察しています。デザイン化した文字と普通の手書き文字でも、同色・横一連・バランスよく矩形図形内に配置した、などの点で一体性が認められ、分離観察する特段の事情はないと判断されています。
(なお、この記事を書いている段階でこの決定が確定しているかどうかは未確認です。)


 [特記事項]
 
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