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@主位的判断の意義
(a)裁判や審判の手続では、当事者の或る請求に対して、一つの事情を事実として認定して主位的判断を示すとともに、その事情が事実でないとしても別の事情を事実として認定して予備的判断を示すことがあります。
(b)主位的判断及び予備的判断を使い分けは、特許庁の審判において比較的良く現れます。
(c)主位的判断及び予備的判断の使い分けが行われる態様の一つとして、それぞれの判断の前提とする事実が両立しないケースがあります。
例えば進歩性を欠如とする特許出願の拒絶査定に対する不服審判において、
・引用例に開示された技術的要素と、特許出願に係る発明の構成要件とが同一であると事実認定して、特許出願は拒絶されるべきである旨の判断(主位的判断)を行い、
・たとえ両者が同一でないとしても設計的事項の範囲の範囲に過ぎないので、やはり特許出願は拒絶されるべきである旨の判断(予備的判断)をする如くです。
→予備的判断とは
(d)それ以外の態様として、例えば訂正審判の次の要件のうち、一つの要件の違反を認定して請求棄却の判断(主位的判断)をし、当該認定が正しくないとしても他の要件の違反を認定できるからやはり請求を棄却するべきである旨の判断(予備的判断)をするケースです。
・訂正の目的が、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記・誤訳の訂正、不明瞭でない記載のいずれかであること(特許法第126条第1項各号)
・その訂正が願書に添付した特許請求の範囲・明細書・図面の範囲内であること。
・その訂正が特許請求の範囲を実質的に変更・拡張するものでないこと。
・訂正後における特許請求の範囲に記載された事項により特定された発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができること。
A予備的判断の内容
(a)事例1[平18(行ケ)10439号・
[発明の名称]インクタンクおよびインクタンクホルダ
[主位的判断]
・本件訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものにも当たらず、特許法134条の2第1項各号のいずれにも該当しないから、不適法として許されず、
・本件特許の請求項1及び6に係る発明は、本件訂正前のもの(本件発明1及び6)として特定され、本件発明1及び6は、いずれも、本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平5−162301号公報(本訴における甲6。以下「引用例1」といい、これに記載された発明を「引用発明」という。)及び実願昭61−28751号(実開昭62−141718号)のマイクロフィルム(本訴における甲1。以下「引用例2」という。)に記載された各発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
[予備的判断]
本件訂正が減縮を目的とする訂正に該当するとしても、訂正発明1及び6は、いずれも、引用発明、引用例2に記載された発明、本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平2−188246号公報(本訴における甲7。以下「引用例3」という。)に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたから、本件特許の請求項1及び6に係る発明についての特許は、いずれも、特許法29条2項(進歩性)の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当するというものである。
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