内容 |
①文字解釈の意義
成文法は、文字により成り立っているため、その言葉を正確に理解することが法律解釈の出発点となります。
判っている積もりでも意外と知らないのが、ありふれた言葉の意義です。そうしたことを確認の意味でここでは紹介します。
②文字解釈の内容
(a)“又は”と“若しくは”との使い分け
前者は大きな区切りにおいて、後者は小さな語群の間で使用します。
“A、B、C若しくはD又はE”→(A、B、C若しくはD)又は(E)
すなわち、(A、B、C、D)のグループから選んだ一つとEとから選択するという意味です。
(b)“並びに”と“及び”との使い分け
前者は大きな区切りにおいて、後者は小さな語群の間で使用します。
“A、B、C及びD並びにE”→(A、B、C及びD)並びに(E)
すなわち、AとBとCとDとを結合し、この結合とEとをさらに結合する意味です。
(c)“者”と“もの”との使い分け
・“者”は、法律上の人格者(人、法人)を言います。
用例 特許法第36条第1項(特許出願)
「特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許長官に提出しなければならない。」
(注) 法律家が条文を音読するときに、“者”を、後述の“もの”と区別するために“シャ”と発音することがあります。“特許を受けようとするシャ”という具合です。
・“もの”は、法律上人格の無い存在(団体若しくは者又は両者)をいいます。
用例 特許法第6条第1項(法人でない社団等の手続をする能力)
「法人でない社団又は財団であって、代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において次に掲げる手続をすることができる。」
(d)“時”と“とき”との使い分け
・“時”は、時間の流れの中でのある時点を表す言葉です。
用例 特許法68条第2項第2号
「2 特許権の効力は、次に掲げる物には及ばない。(中略)
二 特許出願の時から日本国内にある物」
・“とき”は、“仮定的な条件”を表す用語です。
用例 特許法第29条第2項
「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基づいて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。」
(e)“準用する”と“例による”との使い分け
・“準用する”とは、個々の規定を借用することをいいます。
用例 実用新案法第11条 (特許法の準用)
「特許法第30条、第38条、第43条から第44条までの規定は、実用新案登録出願に準用する。」
すなわち、特許出願に基づく新規性喪失の例外の主張手続、共同出願要件、パリ条約優先権や国内優先権を特許出願に主張する手続、分割出願の要件・手続に関する規定は実用新登録出願に借用されます。
・“例による”とは、法制度を借用することをいいます。
用例 特許法第43条の2 (パリ条約の例による優先権主張)
「次の表の上欄に掲げる者が同表の下欄に掲げる国においてした出願に基づく優先権は、パリ条約第4条の規定の例により、特許出願について、これを主張することができる。」
(注)上の規定で「パリ条約第4条の規定の例により、特許出願について…」という代わりに、「特許出願についてパリ条約第4条を準用する。」と規定すると、当該4条だけを準用することになり、意味合いが違ってきます。
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