内容 |
①物権法定主義の意義
(a)物権法定主義は、物権法が強行法規であることを意味します(→強行規定とは)。これは債権法が契約自由の原則に基づき任意法規であること(→任意規定とは)と顕著に相違します。
(b)近代的な法制度を作り上げる際に問題になったのが、“物”のうち特に“土地”の関係でした。封建時代では土地の権利関係が複雑に絡み合っており、一つの土地に対して様々な形で権利を主張する者がいました。
契約自由の原則により、当事者同士が合意すればそうした権利関係を維持できるということにすれば、土地の登記制度を作って、土地と所有者との関係を明らかにしても、実は登記台帳に記載されていない権利主体が何人も存在するという状況になりかねません。
そうした状況では、公示の原則の下で取引の安全を図ることができません。 →公示の原則とは
(c)そこで土地を中心とする物の権利関係を整理して、権利関係に一定の型を定めるために物権法定主義が導入されたのです。
②物権法定主義の内容
(a)特許法の元では、特許出願人が開示した発明を社会に公開する代償として、独占排他権である特許権を付与しています。
(b)発明は、無体物(自然法則を利用した技術的思想の創作)であり、物ではないので、特許権は厳密な意味で物権ではありません。しかしながら、独占排他的効力を付与しており、市場において発明を実施する権利を専有できるので、物権的な権利ということができます。
(c)そこで特許法は、第66条第1項において「特許権は、設定の登録により発生する」と、明文を以て特許権の発生を規定しています。
(d)また特許法には、特許権以外にも、物権的権利として、専用実施権という権利があります。特許権を土地の所有権に相当する権利とするならば、専用実施権は、土地の地上権のような用益物権的な権利と考えられています。
(e)そこで特許法は、第77条第1項において「特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。」と明文を以て定めています。
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