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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1065   

先使用権の趣旨/特許出願/進歩性

 
体系 権利内容
用語

先使用権の趣旨

意味  先使用権とは、他人の特許出願の日前から、同一の発明を異なる知得ルートで知って発明の実施又は準備をしていた者がその実施又は準備する発明及び事業の目的の範囲で取得する法定通常実施権です。

 ここでは先使用権の制度の趣旨について解説します。


内容 @先使用権の趣旨の概説

(a)特許制度は、新規でありかつ特許出願時の技術水準から当業者が容易に創作できない(進歩性)ような発明を特許出願人が開示し、これを社会に公開する代償として、独占排他権を付与するものです。こうした制度の意義からすると、特許出願をしていない先使用者に対して保護(先使用権)を与えることは、格別に有利な取り扱いであり、このことを説明するために、以下に示す通り、様々な学説が提唱されました。

・第一の説は、特許出願前に既に実施し又は実施の準備をして善意の事業者が、その後の特許出願に係る特許権のために実施をできなくなるとすれば、当該発明と特許出願前から既に占有していることが客観的に明らかな善意の先使用者が不利となり、特許権者を過度に保護することになり、両者の間で公平を失する、というものです(公平説)。

・第二の説は、特許出願の際に既に実施し又は実施の準備をしていた事業の継続を不可能ならしめることは善意の実施者に酷であるばかりでなく、国民経済上又は産業政策上妥当でないというものです(経済説)。

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・第三の説は、先願主義を貫くことによって生ずる実質的不利益を是正し、先発明者と先願者との保護の均衡を図るというものです(先発明保護説)。但し、特許出願人が先発明者である場合もあるのがこの説の欠点だと言われています。

・第四の説は、発明者は国民の教師であり、先使用権者は特許出願人(特許権者)の発明から教えられることがないから特許権に服する必要はないとします。しかし特許出願人の発明を教えられることがないというのは、特許出願の際に実施又は実施の準備をしていた者に限られませんので、これも理論上難点があります。

・第五の説は、ノウハウの保護のために先使用権が必要であるというものですが、先使用は公然と行われる場合もあります。ノウハウは秘密状態で行われることを前提とし、先使用権の規定には秘密に実施されるという条件はありませんので、これも理論上難点があります。

 難点のない第一、第二の説が通説と言われています。

A先使用権の趣旨に関する判例

 先使用権の趣旨に言及した判例として、昭和40年(ワ)第3590号「おしゃぶり」事件があります。

「実用新案法において、先使用者に対し一定の保護を与えたのは、実用新案権者に与えられる排他的独占実施権をその出願の際に現に正当に考案の実施の事業をしているもの(あるいはその事業の準備をしているもの)にまで及ばしめるのは公平に反するという趣旨に出るものと解する。」


留意点

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