内容 |
①特許法第152条には、「審判長は、当事者又は参加人が法定若しくは指定の期間内に手続をせず、又は第145条第3項(審理の方式)の規定により定めるところに従って出頭しないときであっても、審判手続を進行することができる。」と定めています。
②こうした考え方は、民事訴訟法にもないわけではありませんが、特許法においては、より重要な意義を有します。
何故なら特許権は対世的な効力を有し、第三者の経済活動に大きく影響するからです。
例えばある発明に係る特許出願が出願公開された後には一定条件の下で補償金請求権が発生し、特許処分により独占排他権が発生します。
また保護の範囲は特許出願の係属中は明細書等の補正により、特許処分後には明細書等の訂正請求又は訂正審判により変動します。
当該発明の技術的範囲に属する技術を実施しようとするライバル会社にとっては、特許権の成否・変動に関わる各種審判の行方が早期に決着することは重要なことです。
③「手続をせず」とは、例えば次のような場合をいいます。
(イ)拒絶査定不服審判において特許出願の原査定と異なる拒絶理由を発見し、特許出願人に拒絶理由通知をして意見書提出の機会を与えたのにも関わらず、期間内に意見書を提出しないとき。
(ロ)訂正審判において、その請求が法律上の要件に適合せず、意見書提出の機会を与えたのに意見書を提出しないとき。
(ハ)当事者系審判において、審判請求書の副本の送達を受けた被請求人の一人が期間内に答弁書を提出しないとき。
④「出頭しない」とは、例えば口頭審理期日に呼び出しを受けながら、その期日に審判廷などの指定された場所に出頭しないことをいいます。
⑤なお、手続をせず、又は出頭しない場合であっても、相手方の主張を真実とみなす(自白擬制)というような特別の効果は生じません。
職権探知主義が採用されているからです。 しかし、手続や出頭をしないことで、結果的に不利な判断をうけることはあります。
⑥さらに、審判長は、期日の指定・変更、期間の延長をすることができます。さらに審判長は、審判手続きの中止を命じ、中断・中止した手続の受継を命ずることができます。
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