内容 |
①クリックラップ契約の意義
(a)法律行為では行為者の意思を確認するために所定の要式をとることが要求されることがあります。例えば特許申請(法律上は特許出願と言います)は書面でしなければならず、発明者が特許庁に行って口頭で特許出願を行うというようなことは許されません。
(b)英米法では契約は書面でしなければならない旨の原則があります。
これは、被告が身に覚えのない約束事(契約)に基づいて原告に訴えられ、その約束があった旨の証人があって、窮地に陥ったというケースがあったためと言われています。言うまでもなく原告も証人もグルであったのであり、それ以来口約束などは排除して書面による契約を重視するという解釈が定着したのです。
(c)しかしながら、コンピュータソフトの使用許諾や譲渡においては、いちいち書面での契約書を作成することは現実ではないために、これに代わる合意方法が必要とされ、その一つとしてクリックラップ契約があります。
(d)クリックラップ契約と類似の概念としてブラウズラップ契約があります。 →ブラウズラップ契約とは
②クリックラップ契約の内容
(a)Specht v. Netscape, 306 F.3d 1(有効性の否定例)を紹介します。
・甲(Netscape
Communication)は、一般ユーザーに対して、ファイルをダウンロードするための無料ソフトウェア“SmartDownload”を提供していた。
・当該ソフトは、ダウンロードしたファイルについての情報と、ユーザー固有のID情報とを甲に送信するクッキーを含んでいた。
・これに気づいたユーザー乙が個人情報を盗み取られたとして、甲を訴えた。
・ダウンロードのためのクリックを行うことにより、前記所定の情報が甲に対して送信される旨の約定(term)がクリップララップ契約に含まれており、これに基づいてファイルの種類及びユーザーのIDの情報を収集することは正当であると甲は主張した。
・しかしながら、裁判所は、甲の主張を退け、乙の請求を認めた。
・その理由は、甲のサイトのダウンロードボタン
の下に,スクロールして次の画面でやっと出てくるように置かれていたクリップ・ラップ契約に係る契約条
項は,原告が当該契約条項を認識して同意したものとは言い難いからです。
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