体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
ブラウズラップ契約( Browse-Wrap license) |
意味 |
ブラウズラップ契約( Browse-Wrap
license)とは、利用者が特段の承諾の意思表示をしなくても、ウエブサイトを利用することで承諾の意思表示と看做して成立を意図する契約形態であって、ウェブサイト上からリンクを張った先に約定(terms)が記載されていて、利用者がリンクをクリックすれば約定を読めるようになっている形式のものです。
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内容 |
@ブラウズラップ契約の意義
(a)法律行為は、特許ライセンスの契約であれ、特許の手続(特許出願など)であれ、行為者が当該行為の意味を理解していることが前提です。
(b)ブラウザラップ契約は、コンピュータの画面を介して何かのコンテンツ(プログラムなど)をダウンロードするに当たり、それによって発生する約束事(terms)を操作画面とリンクした別のサイトに書き込んでおり、実際にそのサイトを開いたり、約定に同意する旨の承認ボタンを押すこともなく、ダウンロードをすれば成立するという契約です。承認ボタンを押すことで成立するクリックラップ契約に比較して、契約の有効性を巡って争いになり易いと言えます。
→クリックラップ契約とは
Aブラウズラップ契約の内容
(a)Pollstar v. Gigmania Ltd. 170
F.Supp.2d 974(E.D. Cal. 2000)を紹介します。
(b)事件の経緯
(イ)原告(Pollstar)は、即時性を“売り”にする、日々更新されるコンサート情報を、多大な時間と労力を掛けて構築・発展させてウエブサイト上の或るアドレスにおいて商業目的で毎日公表していた。
(ロ)このサイトにアクセスする利用者は、原告の使用許諾契約の約定(terms)に従って、そのコンサート情報をダウンロードして利用することができた。
(ハ)使用許諾契約は、「全ての書類と情報は、非商業的目的にのみ利用することができる。」旨の条項を含んでいた。
(ニ)被告は、原告の情報をダウンロードして被告自身のウエブサイトに掲載した。
(ホ)原告は、被告の行為が前記約定に違反すること等を請求原因として、提訴した。
(c)当事者の主張
(イ)原告の主張によれば、ウエブの利用が使用許諾契約に服する旨の告知文に利用者は即座に気付くはずであり、被告は原告のサイトへ]アクセスすることによって同契約の約定に拘束されることを承諾していたにも拘わらず、コンサート情報をダウンロードして商業目的のために利用したので契約違反になる。
(ロ)被告は、請求を述べていないこと(failure to state a claim)を理由とする請求棄却の申立(motion to
dismiss)を行った。
(ハ)・被告は、使用許諾契約への告知文は、灰色の背景色の上に同じ灰色の小さな文字で記載されており、同ウエブサイトへの多くの訪問者が気付かれなかったかもしれないと主張した。
(d)裁判所の判断
(イ)本件に類似の事件として「シュリンクラップ・ライセンス」の契約成立を認容した「ProCD」事件があるが、本件の争点は同事件のそれと異なって、「ブラウズラップ・ライセンス」の成立である。
(ロ)「シュリンクラップ・ライセンス」ではCDやディスクをPCに挿入した際に約定内容が画面に現れて、利用者が承諾をしない限りはそれ以上先に進めない仕組みである。
(ハ)しかし「ブラウズラップ・ライセンス」では、約定が既にウエブサイトの一部を構成していて、利用者が同サイトを訪問すれば契約に同意したことになるというものである。
(ニ)ブラウズラップ・ライセンスの有効性(enforceability)に関しては公表先例が全くないけれども、「ProCD」事件が[アナロジーとして]参考になる。
→有効性(enforceability)とは
(ホ)「ProCD」事件において第七巡回区連邦控訴裁判所は、保険約款等の、支払後に表示された約定に契約拘束力が生じる事例を挙げている。
たとえば支払後に航空券の裏面で約定を示されて、「たとえそれが遡及的で不利な内容であっても、同航空券を利用することは約定に同意したことになる」と指摘している。
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留意点 |
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