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①不特定物の意義
(a)例えば、有名選手が或る試合でホームランを打ったボールをインターネットで購入する時には、記念品としての個性を有するものなので、特定物であり(→特定物とは)、一定の規格に沿ったボールを1ダース購入するというような場合には不特定物です。
(b)類似の概念として、代替物・不代替物がありますが、特定物・不特定物とは意味が異なります。前述のホームランボールは、同型のものがある以上、代替物です。
(c)債権には、特定物を対象とする特定債権と、不特定物を対象とする不特性債権とがあります。
(d)不特定物の売買の場合には、例えば前述の1ダースのボールのうちの幾つかに不具合(例えば野球のルールに沿った反発力を備えていないなど)があっても、買主は、他に替わりがあるのですから、交換を要求すれば足り、それにより契約の目的を達成できるのですから、契約そのものを解除する必然性は乏しいと言えます。
従って主要な学説である法定責任説では、民法570条の瑕疵担保責任(目的物の隠れた瑕疵を買主が知らず、不利益を被った時には解除が可能であり、解除ができない場合には損害賠償請求という手段が取れる)を不特定物に認めることには否定的です。
しかしながら、契約責任説では瑕疵担保責任を不特定物の取引にも認めるべきという立場であり、裁判所は事情に応じて判断をしているようです。
(e)不特定物とほぼ同義の言葉として種類物があります。→種類物とは
②不特定物の内容
(a)特許権や特許出願の譲渡契約或いはライセンス契約では、契約で別段の定めをした場合を除いて、新規性・進歩性の欠如などの無効理由に対して瑕疵担保責任を負うのが通常です(∵発明は技術的思想の創作であって個性があるから、また無効理由の存在が一見して分からないから)。
これに特許品は通常量産可能であり、不特定物ですから、取引対象に欠陥(故障を生ずるなど)があっても別の品物と交換(又は修理)すれば足り、直ちに契約の解除の理由とはなりません。
特許品と競合する第三者の商品も同じです。
もっともその故障が製品の本質的な構造に関わり、何度交換や修理しても同じ故障を生ずたような場合には、不特定物の売買でも契約を解除できるとした事例があります。
→不特定物のケーススタディ1
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