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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1127   

不特定物CS1/特許出願/進歩性

 
体系 民法
用語

不特定物のケーススタディ1

意味  不特定物とは、単に種類に着目し、その個性を問わずに取引した物を言います。


内容 @不特定物の意義

(a)一般に特定物の取引では、その物に容易に分からない欠陥(隠された瑕疵)がある場合には、瑕疵のない別の品物を提供するということができないため、買主は、売主に対して、契約を解消するという形での責任(瑕疵担保責任)をとらせることができます。

 これは、有体物の取引に限らず、例えば特許出願や特許権に基づくライセンス契約にいて、その特許出願前に公開された技術により新規性・進歩性の欠如という無効理由が存在した場合には、契約で別段の定めをした場合を除いて、瑕疵担保責任の規定が適用されると考えられます。

(b)この瑕疵担保責任の規定では、法定責任説では特定物に限られるという立場です。品物に瑕疵があるのが事前に分かっていれば購入しなかったと買主がいうのであれば要素の錯誤による無効(民法95条)を主張すればよく、こうした救済策があるのに瑕疵担保責任の規定を適用するのは、特定物の場合には替わりの物を提供することで契約の目的を達成することができず、契約も解除できないのは、買主に酷だからということの様です。

(c)契約責任説では、瑕疵担保責任の規定は不特定物に適用されるという立場をとります。契約は、瑕疵のない品物を提供することを意図していた筈だから、契約通りにできないのであれば、解除されるのはやむをえないというのです

(d)以上のことを踏まえて、不特定物の瑕疵担保責任を論じた判例を紹介します。判例のポイントは、

・買主の用途に合わせた特注品であっても不特定物であること

・しかし特注の結果として本質的な不具合を生じ、その不具合が修理や交換により解消できないときには、契約を解除できること です。

A不特定物の事例の内容

[事件の表示]昭和53年(ワ)第159号

[事件の種類]売掛代金請求事件

[判決の言い渡し日]昭和57年 6月29日

[発明の名称]茹釜・水洗機

[事件の経緯]

(a)原告甲は、

 昭和51年秋頃、製麺業者である被告に対して連続反転式茹釜の購入方を申し込み、

 被告乙から手打うどん製造用延し機・切り機に加え、これに右茹釜及び反転式による水洗機等を接続する本件機械を受注し、

 この受注により被告の麺製造量及び設置場所に合わせ各器機の形式を選択、組合わせて製作を開始したが、

 第三者から前記右茹釜及び水洗機の複数可動篭の連続反転駆動方式が訴外丙の特許に触れるおそれが指摘され、

 この点を懸念した原告甲の代表者に対して特許にも触れず、また絶対迷惑をかけない旨を説明し、

 昭和51年12月7日に、被告との間で本件機械売買契約を締結し、当該装置の据付がなされた。

(b)しかるに茹釜・水洗機につき、据付直後より故障が続出し、故障の都度に機械が停止し、製造途中の麺類が製造不能となるという不都合を生じた。

 故障の原因の一つは、訴外丙の特許の回避するために追加のパーツを取り付け、その取り付け箇所での重量が増加したためである。

(c)被告乙は、水洗機の故障が修理しても何度も繰り返すために甲に対して直らないようなら機械を引き取るように求めた。

 甲は機械を修理するか交換するまで待って欲しい旨の猶予を求めた。猶予期間として昭和52年5月が設定され、当該期間は後に同年9月まで延長されたが、結局、事態が改善されることはなかった。

(d)訴外丙は、本件装置が自己の特許の技術的範囲に属するとの専門家の調査報告を得て甲に対して特許権侵害差止訴訟を提起した。甲は、本件装置の茹で釜の故障に手を焼いていたため、原告が茹で釜を撤去し丙が訴訟を取り下げるという和解が成立した。

[裁判所の判断]

(a)まず本件売買は、当事者が物の個性に着眼して取引したものではなく、代替性のある一般の商品売買の範疇に入るものであるから、不特定物の売買である。そして本件茹釜・水洗機の度重なる故障の繰返しは、その構造上の欠陥によることが明らかであり、債務の本旨に従った履行とは言い難く、これが原告の責任によるものである以上、再抗弁も失当である。

(b)前記経緯に照らし、右給付につき買主被告において右瑕疵の存在を認識した上でこれを履行として認容した事情は全く認め得ないから、原告は本件機械のうち、茹釜・水洗機につき、なお不完全履行の責を免がれ得ない。

(c)給付の内容が可分の場合、右不完全履行の部分につき一部解除をなし得るものと解すべきところ、本件茹釜・水洗機は本件機械の他の部分と分離独立したものであることは明らかであるから、従って被告は右につき一部解除をなし得るものであり、被告において既に完全な履行を求めて再三原告に対し催告をなしているから、前掲昭和五二年九月二二日の被告より原告に対する右引取り通告により、右一部解除がなされたと認めるのが相当である。


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