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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1143   

特許出願の拒絶等の場合のライセンス料の取り扱い/進歩性/特許出願中

 
体系 権利内容
用語

特許出願の拒絶等の場合のライセンス料の取り扱い

意味  特許出願が拒絶され、或いは登録が無効となった場合に、ライセンス料の支払いを拒絶し、或いは既に支払ったライセンス料の返還を求めることができるかどうかは、特許出願/特許権の扱いの実務上で大きな問題となります。


内容 @特許出願の拒絶等の場合のライセンス料の取り扱いの意義

(a)ライセンシーがライセンス料を支払ってライセンス契約を受けようとするのは、特許権の保護の下で有利に発明を実施したいという要請があるからです。

(b)従って特許出願時に公知の技術に対して新規性・進歩性を否定される場合には、ライセンシーとしては、ライセンス料を支払いたくない、既に支払ったライセンス料は変換して欲しい、と要望するのが通常です。

(c)こうした要望を実現するための手法として、錯誤による契約の無効の主張や、不当利得の返還請求があるます。

(d)しかしながら、特許法では、特許出願に対して新規性・進歩性などを審査し、これらの要件を欠くときには拒絶理由通知を発して意見書・補正書の提出の機会を与えるとともに、特許権の設定登録後にも特許無効審判の請求を認めています。

 従って特許出願が拒絶され、或いは特許が無効となることは、特許出願中の発明或いは特許発明についてライセンス契約を締結しようとする者(ライセンシー)にとっては、ある程度の割合で予定されているというべきであり、簡単に錯誤による無効の主張や不当利得返還請求が認められるべきでありません。

(e)他方、ライセンサーの立場では、こうした主張・請求を予め封ずるために免責条項を契約条項に含めることを検討するべきです。

A特許出願の拒絶等の場合のライセンス料の取り扱いの内容

(a)特許出願中の発明を実施することについてライセンス契約を締結した後に新規性・進歩性の欠如により当該特許出願の拒絶が確定した場合

 ライセンシーとしては、特許出願が特許査定されることを信じて契約を締結したのだから、要素の錯誤により契約が無効である旨を主張することが考えられます。

 しかし要素の錯誤の主張を簡単に認められては法的安定性が阻害されるため、その主張を裁判所に認めさせるのは容易なことではありません。
ライセンス料のケーススタディ1(特許出願の拒絶と錯誤の主張・着換用人形事件)

 特許出願が拒絶になった時にはライセンス料の支払いたくないということであれば、支払い義務を生じない旨の条項を契約書に盛り込めばよく、それをしないで単に特許出願が特許査定されると錯誤したというのは、単に事業者の見込み違いに過ぎず、救済に値しないと裁判所が判断する可能性が高いと考えられます。

(b)特許発明の実施についてライセンス契約を締結した後に進歩性等の欠如により特許が無効になった場合

 既にライセンス料を支払っているときには、不当利得返還請求ができるかどうかが問題となります。

 これに関しては、たとえ特許が無効になっても事実上の保護は得ていたのだから、ライセンサーがライセンス料を得ていたことは不当利得に相当しないという説が有力です。
ライセンス料の返還請求の可否(特許無効等の場合)

 学説が分かれているため、ライセンス契約のときに当事者でこの点に関して合意をしておく必要があります。よく見かける条項は

 「支払い済みの契約金及び実施料は理由の如何を問わずに返還しない」

 というものです。

 この種の条項を入れる場合、ライセンサーの側から“特許が無効になるというリスクに関しては心配しなくて良い。迷惑はかけない。”というような口約束はしないことに留意するべきです。

 それが原因で後日トラブルになる場合もあるからです。
→ライセンス料のケーススタディ2(不当利得返還請求・食品包装容器事件)


留意点

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