体系 |
民法 |
用語 |
原始的不能 |
意味 |
原始的不能とは、債権について履行の不能なことが最初から確定していることです。
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内容 |
①原始的不能の意義
(a)例えば馬10頭を譲渡する旨を契約しようとする場合に、譲渡しようとしていた馬が病気などで死んでしまったら、代わりの馬を譲渡すれば足ります。しかしながら、特定の馬(例えば或る名馬の仔馬)を譲渡しようとしていて、譲渡契約前にその仔馬が死んでしまったら、その契約を履行することは最初から不可能です。
こうした場合にその譲渡契約は原始的不能となります。
(b)原始的不能は後発的不能に対する語です。 →後発的不能とは
(c)債権が原始的に不能である場合には、当該債権は成立し得ないため、債権の成立を目的とする法律行為は無効となります。
②原始的不能の内容
(a)例えば特許出願中の発明について、仮専用実施権や仮通常実施権の設定のライセンス契約をしようとしたが、実は当該特許出願について所定期間内に審査請求していなかったために、当該特許出願が取下げ擬制されていた場合が該当します。
すなわち、特許出願の日から3年を経過する前に、当該出願について実体審査を行うことの請求(出願審査請求)が行われなければ、権利化への手続きにつながらず、特許出願は取下げ擬制されます。
同様に、特許権について専用実施権又は通常実施権を設定するときも年金の不能などにより特許権が消滅しており、かつ追納などにより特許権を回復できないときには、ライセンス契約を締結することは原始的に不能です。
従ってライセンス契約などの交渉を開始する前に特許庁のHP(特許情報プラットフォーム)により当該特許出願又は特許権が失効していないことを確認することが重要です。
(b)なお、拒絶理由の存在を理由に特許出願中の発明のライセンス契約の原始的不能であるという主張したものの、裁判所に採用されなかったと言う事例があります。
→原始的不能のケーススタディ
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留意点 |
現在民法の改正作業が進められており、この記事の掲載後に原始的不能に対する取り扱いが変更される可能性があります。実際の法律解釈に際してはその時点での法律を参酌して下さい。
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