内容 |
①Hypothetical negotiationの基準日の意義
(a)Hypothetical
negotiation(仮想交渉)とは、米国特許訴訟上の概念であって、次のことを仮定して、侵害行為の時に訴訟の当事者が特許ライセンスの契約に至ったことを仮想して合意に至ったであろう額を検討する手法です。
・侵害対象である特許権の有効であること。
・権利行使可能であること。
・侵害の事実が存在すること。
(b)例えば米国特許出願について出願公開が行われた段階において、その発明を実施しないか特許出願人から打診された場合には、低額のライセンス料が提示されるのが通常ですが、特許出願に対して特許の発生があった後でも、ライセンス交渉のタイミングによりライセンス料が変化する傾向があると、一般には考えられています。
(c)例えば特許権者が複数の事業者に対して特許権を行使しようとする場合において、最初の交渉相手に関しては、特許の有効性に関して争わない代わりにライセンス料を安くすると持ちかけられることがよくあります。
これに対して、既に多数の事業者に対して実施許諾をした後ですと、それらの事業者に対するライセンス料が相場となりますので、特別な事情がない限り、その相場から低いライセンス料は設定されにくくなります。
②Hypothetical negotiationの基準日の内容
(a)特許侵害を構成する複数の行為があった場合には、仮想交渉の基準日は、行為毎ではなく、その訴訟において特定の1日が設定されるというのが、判例になっています。
LaserDynamics, Inc. v. Quanta Computer, Inc., 694 F.3d 51,
(b)また技術標準として採用された特許発明に関して特許権者がRAND宣言を行った時点より前に仮想交渉の基準日を設定するべきか否かが争われた事例があります。
Ericsson, Inc. v. D-Link Sys. Inc., et al., 773 F.3d 1201
宣言を行った以後に仮想交渉の基準日を設定するのであれば、「全ての希望者に対して、合理的かつ非差別的な条件で全世界において実施することができる権利を合理的な額で許諾する」というRAND宣言の内容が実施料率に反映されるべきと考えられるからです。
→RAND宣言とは
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