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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1213   

職務発明CS1/特許出願

 
体系 特許申請及びこれに付随する手続
用語

職務発明のケーススタディ1(退職前の発明)

意味  職務発明とは、従業者等がした発明であって、その性質上使用者等に属し、発明をするに至った行為が使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明です。


内容 @職務発明の意義

(a)他人を雇用する使用者・法人・国・地方公共団体(使用者等)は、その他人である従業者・法人の役員・国家公務員・地方公務員(従業者等)が発明をし、その発明をするに至った行為が使用者等における現在又は過去の職務であるときには、

 その発明(職務発明という)について他人が特許出願して設定登録を受けたときには当該特許権について無償の法定通常実施権を取得する他、

 特許を受ける権利(特許出願をする権利)を原始的に取得できるなどの特約を従業者等との間で締結することができます。

(b)こういう制度を設けた趣旨は、使用者等も従業者等の給料を支払い、或いは技術開発のための設備を提供するなどの形で、職務発明の成立に貢献しているからです。

(c)法律の条文上、従業員等の職務とは“現在又は過去の”職務とされており、例えば同一企業内で研究員が営業職に配置転換されたときも該当するとされています。

 しかしながら、従業員がある企業Aを退職して、別の企業Bに転職した後に発明を完成させた場合まで企業Aに通常実施権が発生することは行き過ぎであると考えられるため、条文において“使用者等における現在又は過去の職務”と規定し、退職後に完成した場合を除外するようにしています。

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A職務発明の事例の内容

[事件の表示]昭和50年(ワ)第1948号

[事件の種類]使用者が特許を受ける権利を有することの確認請求事件(申請認容)

[判決の言い渡し日]連続捏和機

[考案の名称]連続捏和機

[事件の経緯]

(a)本件は退職後の一週間で発明を完成し、その3日後に特許出願に至ったと主張する元従業者(被告乙)と、在職中に発明は完成していた筈であると主張する使用者(原告甲)との間で争いになった事件です。

(b)甲における乙の職歴は次の通りです。

 昭和42年1月6日、甲に第1回入社(設計課員として)

 同年7月31日退職

 昭和44年1月26日、甲に再入社

 昭和45年9月、本社設計課長となる。

 昭和48年3月22日、同設計部長に昇進し、主として顧客の注文にかかる各種混練機の設計図作成の掌にあたり、その総括責任者として働らく。

 昭和49年6月20日、退職

 昭和49年7月1日、自己の名で連続捏和機の発明について特許出願をした。

(c)さらに甲の業務活動としては、次の事実があります。

・原告甲の代表者丙が昭和46年ごろ社の方針として混練機の改良を重視し、自ら連続混練機の構想を抱き、時に設計課員に命じてその具体化の想をも練らせており、従来機の欠点およびあらたに開発しようとする連続混練機の技術上の解決課題は被告の本件発明の解決課題と全く同一である。

・原告代表者は昭和48年1月13日恒例の年初の合同会議の席上で、同年度の方針の1つとして「連続混練機の開発」を明示し、設計担当者を丙、乙、丁とすることを決定した。

・被告乙の統括する設計部(主として丁担当)では直ちに別紙図面に表現されているようなテスト機の設計図作成に着手し、同年10月早々に完成した。そして、被告乙は上記図面を査閲し検印も押捺している。

・被告乙は同年10月3日、自社工場の製造部長にテスト機を製作するように指図命令書を発している。

・被告乙は昭和49年1月14日の年頭全体会議においても自ら近く連続混練機を実用化することを一同に述べ、2月ごろにはテストを終りたい旨も附加説明している。

・乙はそのころ度々工場に赴きテストを親しく検分し、悪い点を指摘するなどした。

・乙は同年4月ごろから原告会社懸案のテスト機について質問意見を出さなくなった。

・乙は、同年5月18日の会議の席上で退職すると告げ、会社側の慰留も聞き容れず、6月30日に退職した。

[被告(発明者)の主張]

 連続混練機の構想は原告会社に勤務する以前から常々念頭にはあったが、原告会社在職中は具体的研究の時間的余裕はなかった。原告会社退職(昭和49年6月20日)後一挙にその構想を模型化し、約1週間後(同年同月27日)に一応完成し、やがて同年7月1日特許出願することができた。

[裁判所の判断]

(a)「発明をするに至った行為」とは、発明が思想であり、人の知的活動の所産であることからして、主として思索的行為または精神的活動を指称するものと解すべきであり、その行為は本来客観的に捕捉し難い性質のものである。

(b)したがって、被告の本件発明の職務発明性の要件ことに発明の着手完成時期を判断するについては、単に被告本人の供述だけを資料とするのではなく、被告の原告会社在職中の所為を広く検討し、諸般の事情を総合考慮すべきである。

(c)被告は本件発明について特許出願をした後その実施品の完成に努め、やがて昭和50年2月12、13日の大阪国際貿易センター1階においてこれを「KCK連続混練装置」と銘打って発表実演会を開催したが、その直前である同月1日付の業界誌によると被告の上記装置は「被告において一昨年(昭和48年)から研究に着手したものである。」要旨のことが報ぜられている。

(d)被告は原告会社の本社設計部長として混練機ことに連続混練機の改良発明を試みさらに効率のよい機械にするように努力すべき具体的な任務を有していたもので、本件発明はまさに被告の職務の1つとして期待されていたものであることが明白である。

(e)また、本件発明の着手完成時期についても、結局、前記被告本人の供述はとうてい信用することができず、かえって本件発明は原告が主張するとおり被告の2回目の在職期間中に着手完成されたものであると推認するに十分であり、ただその具体的な時期を明確な日時をもって特定できないだけであると考えられる。

[コメント]

 職務発明が勤務時間になされる必要があるか否かについては下記を参考として下さい。
職務発明のケーススタディ2(勤務時間外の発明)


留意点

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