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@予約完結権の意義
(a)当事者の片方(予約者)が将来において売買などの法律行為を為すことを“予め約束”し、他方(予約締結権者)がこれに合意したときには、予約が成立します。
(b)予約をした後に本契約を締結させるためには、予約完結権を有する当事者が他方の当事者に対して予約完結の意思表示をしなければなりません。
予約完結の意思表示をした場合に、相手方の当事者がこれを承諾する義務を負うのか、こうした承諾なく本契約が成立するのかが問題となりますが、日本の民法は売買に関して後者の立場をとっています(民法556条第1項)。
そしてこの規定は有償契約に準用されています(民法559条)。
(c)もっとも相手方の当事者(予約者)としては、予約完結権者がいつまでもその意思表示をしない場合には不都合(例えば物を売ることを予め約束した場合には、在庫がいつまでも掃けないなど)を生じるおそれがあります。
そこで民法556条第2項は、“意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方(予約完結権者)に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。”と定めています。
予約完結権者がその期間内に確答をしないときは、予約は、その効力を失います。
(d)予約完結権は当事者の一方が他方に与えるものですから、当事者のいずれかが予約完結権者であるのかは、当事者の意思により決定されます。
具体的には、契約書に定められているときには、その通りに、契約書に定められていないときには、商慣習などを考慮して当事者の意思を合理的に推察して判断することになります。
(e)予約契約書を作成するときには、例えば下記のように予約完結権者を明記することが推奨されます。
“○○の所有者甲は、予約完結権者(売買予約権者)乙に対して、別紙目録記載の〇〇につき、本日、下記の約定で売買の予約をすることを約し、乙はこれを承諾した。
・本予約にかかる売買代金は、金○○○○円とする。
・乙は、平成○○年○○月○○日までに売買完結の意思表示をすることができる。”
@予約完結権の内容
(a)知的財産権の分野では、過去の裁判例において、甲が或る発明について特許出願をしたときに乙に対して将来取得すべき本件特許権の独占実施許諾の予約をし、当該特許出願について出願公告された時点で乙が予約を完結し、独占排他権を取得したという例があります(昭和50年(ワ)第3151号)。
この事例は、甲及び乙が共に特許侵害事件の訴訟となった事例であり、事件の内容には立ち入りませんが、この場合には乙が予約完結権者であることになります。
なお、特許出願人に対して出願公告の時点で仮保護を付与するという制度は平成6年に廃止されていますが、現在では出願公告に代えて特許権の設定登録の際に予約を完結するような趣旨の予約契約と理解すれば良いかと考えます。
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