体系 |
法律全般 |
用語 |
物上請求権 |
意味 |
物上請求権とは、物権の完全な実現が妨害され又は妨害されるおそれがある場合に、物権を持つ者が妨害者に妨害の排除を請求する権利です。
物権的請求権とも言います。
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内容 |
@物上請求権の意義
(a)物権は、対象である物に対する支配的機能を有するが故に、物権の効力として物上請求権が認められるというのが、判例学説の立場です。
また専有権に基づく物上請求権である占有訴権が存在することも、物上請求権を認める根拠となります(→占有訴権とは)。
(b)民法は、所有権の対象を有体物としているため、厳密に言えば、無体財産権である特許権等について、民法の物上請求権の理論を適用するのには無理があります。そこで特許方は、物上請求権に類似する権利として差止請求権を認めています(同100条)。
もっとも特許出願中の保護としては、こうした物権的な権利が認められておらず、補償金請求権(特許出願の出願公開が行われた後であって特許権の設定登録前に業として当該特許出願に係る発明を実施した者に対して、警告等を条件として特許出願人が補償金を請求できる権利)のような債権的権利が認められるに過ぎません。
A物上請求権の内容
(a)物上請求権には、次の3種類があります。
(イ)物権の目的物を他人によって占有されていることにより物権を侵害されている場合にその者の返還を請求できる権利(→物権的返還請求権とは)
(ロ)物権の内容の完全な実現が占有以外の形で妨害されている場合に当該物権に基づいて妨害の排除を請求する権利(→妨害排除請求権とは)
(ハ)物権の内容の完全な実現が占有以外の形で妨害されるおそれがある場合に当該物権に基づいて妨害の予防を請求する権利(→妨害予防請求権とは)
(b)所有権と物上請求権との関係は、特許権と差止請求権との関係を解釈する際に引き合いに出されることがよくあります。例えば全範囲に専用実施権が設定された特許権に基づく差止請求権の可否について過去の裁判例(昭和34年(ワ)第250号)は次のように述べています。
“原告が訴外会社に対し設定した実施権が、範囲無制限の専用実施権であるか否かは明らかでないが、たとえそれが範囲無制限の専用実施権であるとしても、原告が特許法一〇〇条に基く差止請求権を有することに変りはないと解される。けだし同条及び同法七七条の明文上、特許権者が第三者に対し専用実施権を設定することによって特許権に基く差止請求権を失うものとは解し難いのみならず、特許権者の専用実施権を設定する関係は、恰かも所有者が所有物を第三者に使用収益せしめる場合の関係に等しく、あくまでも制限的権利の設定に他ならず、右の場合特許権者が差止請求権を失わないのは所有権者が物上請求権を失わないのと同様であると解されるからである。”
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