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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1266   

均等論の第5要件CS1/特許出願/禁反言

 
体系 権利内容
用語

均等論の第5要件のケーススタディ1

意味  均等論の第5要件とは、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がないことです。


内容 @均等論の第5要件の意義

(a)均等論とは、特許権の効力範囲を、特許権の請求の範囲の文言通りの範囲から拡張する解釈論です。

 特許請求の範囲は、その記載を以って特許発明の技術的範囲を定めるべき権利書的役割を担うものです。しかしながら、無体物である発明を文章化することは容易ではなく、さらに将来の侵害の態様を特許出願人が全て予測することは困難を極めるため、特許発明の要件の一部を一定の条件の下で他の要素に置き換えたものを、特許発明の技術的範囲に属するものとする、という均等論が裁判上で認められています。

(b)均等論の第5要件として、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がないことが挙げられています。

 典型的な例として、特許出願の審査段階で新規性や進歩性を否定する先行技術が拒絶理由通知において示され、この先行技術を回避するために特許出願人が請求の範囲を減縮した場合が該当します。

 特許発明の技術的範囲を文言通りに解釈して権利侵害となる場合ですら、特許出願人が意見書で述べた釈明等により、放棄されたと認められる範囲に関して権利を主張することは、包袋禁反言の原則により許されません。

 まして均等論の適用において、包袋禁反言の法理に反する権利の主張が許されて良い道理がありません。

 しかしながら、特許出願人が、補正の新規事項の追加の制限との関係で、先行技術を回避するために必要な範囲以上に過剰に請求の範囲を減縮せざるとえなかった場合に、補正により放棄された範囲の全てについて、均等論を適用しないのかどうかが裁判上の争点となる場合があります。こうした事例を紹介します。

A均等論の第5要件の事例の内容

(a)この要件について判断した事例として、平成8年(ワ)第1133号/支持真柱建込み装置事件を挙げます。

・本件特許出願の出願当初の請求の範囲には、支持真柱建込み工法の発明に関して「回転調節自在な支持真柱建込み装置を地盤上に設置し」と、また支持真柱建込み装置に関して「上部台車上に回転自在にして固定位置が調節できる回転台を設け」とそれぞれ限定されていた。

・この特許出願に対して審査官は、進歩性の欠如を理由とする拒絶理由通知を発した。

・右拒絶理由に対して、特許出願人は、手続補正書を提出して、特許請求の範囲の該当箇所を「三六〇度回転調節自在な支持真柱建込み装置を地上に設置し」及び「この上部台車上に三六〇度回転自在にして固定位置が調節できる回転台を設け」のように補正した。そして、意見書を提出して、本件引用例1、2においては、わずかな角度回動することが開示されているのみであるが、本件各発明においては、三六〇度回転自在であるから、そのような三六〇度回転自在である構成は、引用例にはない旨主張した。

・裁判所は、「イ号方法及びイ号装置のように、構真柱建込機がわずかな角度範囲でしか回動しないものは、特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものということができる。したがって、イ号方法及びイ号装置が、本件各発明と均等であるということもできない。」と判示しました。


[コメント]

 先行技術を回避するために請求の範囲を過剰に限定したために不利になった事例です。これを回避するためには、特許出願の段階で“360度回転自在”の他、“180度回転自在”などの実施例を明細書に記載しておくことが重要であると考えられます。 


留意点

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