パテントに関する専門用語
  

 No:  1294   

特許出願(外国)/Eディスカバリー

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

E-ディスカバリーのケーススタディ

意味  E-ディスカバリーとは、米国の民事訴訟におけるディスカバリー(情報開示手続)のうち電子的に保存されているものに関するものをいいます。



内容 ①E-ディスカバリーの意義

 企業内での研究開発では、特許出願に先立って発明者と知財担当者との間で様々な技術情報のやりとりが電子メールなどで行われます。特許出願前の先行技術を足掛かりとして新たなアイディアが生まれることはよくあることです。

 こうした情報は、改良発明を生み出す上で重要である反面、特許訴訟になったときには、相手側の当事者が入手したい情報となります。

 仮に特許出願の審査の結果を左右し得る情報が米国特許商標庁に提出されていなかった場合には特許商標庁を欺いた(フロード)と判断され、特許無効の理由となり得るからです。

 気をつけなければならないのは、現実にはフロードの事実がなくとも、他人との訴訟の可能性が発生した後に慌てて関連する電子メールを削除したりすれば、情報保全義務違反に対する制裁として、特許権者側に不利な推定が行われる可能性があることです(→不利な推定とは)。

 こうした推定は裁判の行方に対して大きな影響があります。従って電子媒体に保存された情報の開示手続(E-ディスカバリー)における開示義務がどの程度の範囲で及ぶかをよく理解しておく必要があります。そうした事例を紹介します。

②E-ディスカバリーの事例の内容

(a)E-ディスカバリーで提出すべき資料の判断基準を示す判例として、Zubulake 判決があります。この事案は、雇用差別に関するものであり、特許に関する事例ではないですので、事件の経緯の説明は省略します。

(b)この判例で重要なのは、電子情報を保管形態により5つのグループに分類し、3つのグループは合理的に入手可能であるとして、提出義務有りとし、2つのグループに関して合理的に入手可能でないので、提出義務がないと判示したことです。

(イ)提出義務があるもの

・アクティブ、オンライン・データ

 これらは利用中のハードディスクのデータなど、通常通りに使用できるデータです。

・ニアライン・データ

これらは、光学式ディスクなど、取り外し可能であって容易に接続可能なデータです。

・オフライン・ストレージ/アーカイブ

 これらは、倉庫に保管されたディスクなど、人手を介して利用できるデータです。

(ロ)提出義務がないもの

・バックアップデータ

 これらは、専ら災害時の復旧用に用いられるバックアップなど、回復に費用を要するデータ

・削除・破損データ

(c)電子メールなどを永久に保存しておくことはできないため、削除・破損データがE-ディスカバリーの対象にならないのは合理的なことです。

 しかしながら、訴訟の可能性が発生した後に関連する電子メールが破棄された場合には、仮に破棄した人間に情報を隠す意図がなくても、E-ディスカバリーの制裁が科される点には留意する必要があります。

 電子メールを2週間後に削除する設定をメールシステムが導入されている企業において、訴訟の可能性が生じた後に知財担当者が関連する電子メールを廃棄しないように従業員に指示したところ、その指示が守られずに結果として電子メールが削除された事例において、故意による情報保全義務違反であると認定された事例があります。
不利な推定(Adverse Inference)とは



留意点

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