今岡憲特許事務所マーク

トップボタン
 パテントに関する専門用語
  

 No:  1316   

Appellant’s brief/特許出願

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

Appellant’s brief

意味  Appellant’s brief(控訴人側準備書面)とは、控訴人が原審の判決の誤りに関して短く記載した書面(趣旨書)をいいます。


内容 @Appellant’s briefの意義

(a)控訴審の手続では、まず控訴人が準備書面を提出し、原審の判決の誤りを指摘し、判決が取り消されるべき旨を訴えます。

(b)具体的には、準備書面では、

 裁判管轄権に言及し(Statement of Jurisdiction)、

論点を説明し(Statement of issues)、

事件の概要を述べ(Statement of case)、

事実関係を解説し(Statement of facts)、

主張のサマリーを示し(Summary of argument)、

具体的に主張の内容を述べ(Argument)、

結論に至ります。

(c)Appellant’s briefとして提出できる書面の分量は、第一審に比べて制限されます。手続きを迅速に進めるためです。

(d)従って控訴人が何を準備書面に記載するかは非常に重要となります。

AAppellant’s briefの内容

(a)例えば次の事例は、米国意匠特許の権利侵害の成否が争われた事例です(No. 15-1553)。

(イ)意匠特許とは、物品のデザインに関して特許出願して取得した独占排他権(日本の意匠権に相当する権利)です。特許の対象は、個人用フロート装置(personal flotation device)であり(救命胴着のようなもの)、人体の胴部に適用する主要部の両側に一対のアームバンドを付してなります。

(ロ)特許出願人は、この物品のデザインを次のようにクレームしました。

 “図1から図8に示す個人用フロート装置の装飾的デザイン。”

“The ornamental design for a personal flotation device, as shown and described in Figures 1–8.”

 このように図面を引用したクレームは、オムニバスクレームと呼ばれ、米国の意匠特許出願では普通に行われている実務です。
→オムニバスクレームとは

zu

(ハ)地方裁判所は、本件特許に関して次のようにクレームの解釈を行いました。

“図1から図8に示す個人用フロート装置の装飾的デザイン。但し、当該装置の左右のアームバンド及び主要部の左右両側のテーパ部分は、機能的であって装飾的ではないので除外する。”

“The ornamental design for a personal flotation device, as shown and described in Figures 1–8, except the left and right armband, and the side torso tapering, which are functional and not ornamental.”

 要するに、装置全体のうちで左右のアームバンド及びこれらに連なる主要部のテーパ部分を特許の構成要素から除外したのです。この解釈では係争物のアームバンド部分に特許証の図面と現れた意匠と異なる特徴があっても考慮されないことになります。

 このクレーム解釈の元で地方裁判所は、特許権が侵害されていると認定しました。被告はこの判決を不服として控訴しました。

(b)被告(控訴人)は、Appellant’s briefの中で

(イ)まずStatement of issueにおいて

 ‘地方裁判所は、法律問題として、そのクレーム解釈において、本件特許の特徴の幾つかを“機能的”であるとして完全に除外するという誤りを犯したか否か。’

‘Whether the district court erred as a matter of law by completely eliminating

individual elements from the scope of the D’714 Patent in its claim construction after incorrectly determining those individual elements were“functional.”

 という問題提起を行い、

(ロ)Summary of argumentにおいて、地方裁判所の判断は先例に示された判断基準(Berry Sterling Standards)から見て妥当ではないと論じました。

 すなわち、裁判所は、commercial embodiment(商業的実施例)のような外部のソースをクレームの解釈には含めるべきではないが、

 本件特許のアームリスト及びこれに連なる主要部のテーパ部分は、純粋に機能的ではないから、クレーム解釈から除外されるべきでないと主張したのです。

Berry Sterling Corp. v. Pescor Plastics, 122 F.3d 1452, 1453

(ハ)控訴裁判所は、この主張を認めて、原判決を一部取り消し、ケースを地方裁判所に差し戻しました。

(ニ)同じようなことを言うようでも、“本件特許のリストアーム及びこれに連なる同部のテーパ部分は装飾的な意味を含む。”というのと、“純粋に機能的でない…の形状をクレーム解釈から除外した原判決は、△△の判決に反するから、誤りである。”というとはでは相手に与える印象が異なります。

Appellant’s briefにおいては、自己の主張の根拠となる判決などを引用して、原判決の誤りを明確に示すことが重要です。



留意点

次ページ

※ 不明な点、分かりづらい点がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。


 

パテントに関する専門用語一覧へ戻る




今岡憲特許事務所 : 〒164-0003 東京都中野区東中野3-1-4 タカトウビル 2F
TEL:03-3369-0190 FAX:03-3369-0191 

お問い合わせ

営業時間:平日9:00〜17:20
今岡憲特許事務所TOPページ |  はじめに |  特許について |  判例紹介 |  事務所概要 | 減免制度 |  リンク |  無料相談  


Copyright (c) 2014 今岡特許事務所 All Rights Reserved.