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@指示評決動議の意義
(a)裁判官は、当事者の動議により、陪審による審理を省略して、指示評決を行うように陪審員に指示することができます。
(b)決定的な証拠が明らかになり、陪審による審理の争点がなくなったときに限って、指示評決が認められます。
すなわち、普通の人間が常識的に考えて結論が明らかである場合には、
(c)例えば、或る物質Xから別の物質Yが生成される場合において、その下の物質Xについて特許出願して権利を取得した場合には、いわゆる間接侵害の規定が適用されるケースを除いて(→米国における間接侵害とは)、この特許権の効力は物質Yに及びません。
仮に特許侵害訴訟において、特許権の対象がXであり、訴追された物(係争物)が物質Yである場合には、被告から、指示評決の動議が出される可能性があります。
裁判官が動議を認めるかどうかは、ケースバイケースです。指示評決動議は、本来、明白な証拠が存在するときに行われるものですが、実務上は、下記の事例に示すように、判断が微妙な場合でも出されることがあります。
物質Yに特許権の効力を確実に及ぼすためには、物質Yについて特許出願をするか、少なくとも物質Xから物質Yを生成する方法について特許出願をする必要があります。
もっともこれらの発明に関して新規性や進歩性がない場合には、それらの特許出願は拒絶されることになります。
(d)指示評決と関連する概念として、次の用語があります。
・JMOL(Judgment as a matter of
law)
・Judgment n.o.v.(評決と異なる判決)
指示評決動議とJMOL動議とは、もともと区別されていましたが、1991年の連邦民事訴訟規則の改正により、 directed
verdict(指示評決)及びjudgment n.o.v.(評決と異なる判決) を「judgment as a matter of
law」 と総称するようになりました。
A指示評決動議の内容
(a)知財の分野で指示評決動議が出された事例として、EXXON CHEMICAL PATENTS, INC., Exxon
Corporation and Exxon Research and Engineering Co.,(原告・被控訴人) v.
LUBRIZOL CORPORATION,(被告・控訴人) Nos. 93-1275, 94-1309.を挙げます。
(b)原告は、内燃機関のクランクケース用の潤滑油という用途に好適な成分を含む組成物について特許出願した発明者から特許権(米国特許第4,867,890号)を譲り受け、被告を相手方として特許侵害訴訟を提起しました。
(c)原告は、本件特許は当該組成物の成分の“
recipe”(レシピ或いは処方箋)をクレームしているのであって、クレームされた成分を使用して製造されるいかなる製品にも効力が及ぶと主張しました。
(d)被告は、発明者は生産物の製造プロセスではなく組成物をクレームして特許出願し、権利を取得したのであり、特許権の効力が及ぶ範囲はせいぜい当該組成物を包含する最終生産物に止まると主張しました。
(e)被告は、陪審による審理を経るまでもなく、原告の訴えを退ける指示評決を出すように動議を提出し、裁判官がこれを拒否すると、JMOL動議を提出しましたが、これも裁判官により拒否されました。
トライアルの判事は、本件では発明の化学的観点及びこれに関連する法律観点を理解することが非常に難しいと見解を述べました。
(f)結局、地方裁判所は、原告の特許が有効であり、かつ被告は原告の特許を侵害していると判決しました。被告は、これに対して控訴しました。
(g)控訴裁判所は、原告の提出する証拠の中に被告の製品が原告の特許を侵害していることを示す証拠は見出し得ないと判断し、その証拠の欠如を理由として、被告は「judgment
as a matter of law」の動議を行うことができると認めました。
そして控訴裁判所は、原判決を覆しました。
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