No: |
1372 ダウバートスタンダード (Daubert
standard)/特許出願/ |
体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
ダウバートスタンダード(Daubert standard) |
意味 |
ダウバートスタンダード(Daubert
standard)とは、米国において、科学的な事柄に関する専門家証人の証言に関して証拠としての受け入れ可能性(admissiility)があるか否かを判断する基準であり、証言が依拠する論理が検証可能(testable)か否か、同業者により再検討されているか否か、当該論理による誤差の確率、当該理論が科学業界で受け入れているか、を判断のファクターとするというものです。
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内容 |
①ダウバートスタンダード(Daubert standard)の意義
(a)ダウバートスタンダードは、Daubert事件{Daubert v.Merrell Dow Pharmaceu-ticals,
Inc.,509 U.S.579
(1993)}で、科学的な専門家証人の証言の受け入れ可能性(admissibility)に関して裁判所が示した判断の基準です。 →専門家証人
(Expert)とは →Admissibility(証拠能力)とは
(b)この事件の前には、“受け入れ可能な科学的証拠は、科学的コミュニティにおいておおよそ受け入れた(generally
accepted)理論の結果でなければならない。”というスタンダード(Frye test)が適用されていました。
(c)Daubert事件の概要は、おおよそ次の通りです。生まれながらの障害を背負った子供(Daubert)の両親が、この障害は薬剤による副作用であるとして、製薬会社を訴え、これに対して、製薬会社側の専門家証人が前記Frye
testに照らして、薬と障害との副作用の因果関係は不明であると証言しました。
これに対して、Daubertの両親の側は、試験管内(in vitro)及び生体内(in
vivo)の動物実験に基づく証拠を示して、製薬会社側の専門家証人の方法論(methodologies)は科学的コミュニティに未だ受け入れらてていないと主張しました。
地方裁判所は、製薬会社の側の主張を支持し、控訴裁判所も、この決定を支持しました。
最高裁判所は、Frye
testの当否に踏み込んで審理し、前述の“科学的コミュニティに受け入れた”こと以外の判断ファクターを組み込んだ新たなスタンダードを作成し、このスタンダードに照らして、原判決を取り消し、事件を差し戻しました。
(d)ダウバートスタンダードは、ダウバート判決(1993)によれば、もともと科学的な専門家の証言を対象としていましたが、
その後の判決により技術的専門家その他の専門家に適用されるようになりました(Kumho Tire Co. v. Carmichael,
526 U.S. 137 (1999))。
②ダウバートスタンダード(Daubert standard)の内容
(a)Daubert 判決によれば,裁判官は,科学的な専門家証人の証言の証拠適格性を、例えば以下のファクターに基づき判断します。
(i)専門家が依拠した理論や技術が検証可能(testable)か,あるいは検証されているものか?;
(ii)当該理論又は技術が公表され同業者による再検討 (subject to peer review)を受けているか否か?;
(iii)知られた又は潜在的に知られた,当該理論又は技術の誤差の(誤りの)確率;及び
(iv)
当該理論又は技術はその科学コミュニティで一般的に受け入れられているか?
(b)専門家証言がダウバートスタンダードに反しており、採用されるべきでないと申し立てることをダウバート・モーション(Daubert
motion)といいます。 →ダウバート・モーション(Daubert
motion)とは
(c)特許訴訟の場合には、科学的な専門家証言は、例えば特許発明と侵害と申し立てられた技術との類似性に関して行われます。
具体的には、特許出願時の技術水準や慣用技術などを参照しながら、両者が技術的観点からどの程度類似するものであるかについて意見を述べるのです。
こうした専門家証言に関しては、ダウバート・モーションが行われることは、あまりないと言われています。原告側の専門家と被告側の専門家との間で意見が異なることはありますが、考え方の大筋は同じであり、証拠として採用できないという程の食い違いではないからです。
しかしながら、科学的な専門家意見の採用に関してモーションがかかることが全くない訳ではありません。そうした事例を紹介します。
→ダウバートスタンダード(Daubert
standard)のケーススタディ1
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