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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1385   

技術的専門家CS4/特許出願/

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

技術的専門家のケーススタディ4

意味  技術的専門家 (technical expert)とは、米国の専門家証人の規則上、技術的な事柄に関して、知識・技能・経験・訓練又は教育により専門家としての適性を有する者をいいます。



内容 @技術的専門家の意義

 専門家証人は、裁判上の争点となっている事実に関して、法廷において自分の意見を述べることができ、裁判官はこれを証拠として採用することができます。

 当然ながら、専門家の意見が証拠として採用されるためには、当該意見が学会などで一般に求められる理論や学説により裏付けられている必要があります。

 しかしながら、こうした理論などに裏付けられた意見であっても、裁判所が受け入れることができない(証拠適格性がない)と判断される場合があります。

 専門家証人の証言に関するダウバートスタンダードによれば、意見の基礎となる理論・学説は検証可能(testable)でなければなりません。

 それと同じ理由で、どういう根拠で専門家証人の意見が導かれたのかも検証可能である必要があります。

 特許出願の要件の一つとして、公知発明(又は先願発明)から予期できないこと(予期性)が挙げられます。この予期性の範囲は、我が国でいう発明の同一性に対応しており、結局、特許出願前に公知となった発明、又は先願発明と同一でないことと、おおよそ同義と解釈されます。

 証人がトライアルの前の手続き(デポジション)において、本件特許の発明は、先行する特許出願に係る他人の特許発明と同一である旨を述べたけれども、その結論を所定の手法(発明のエレメントを特定し、解釈し、他人の発明との比較を詳細に説明する)で裏付けることを怠ったため、当該証言が証拠として採用されなかったと言う事例があります。

 ここではこの事例に関して紹介します。

A技術的専門家の事例の内容

[事件の表示]NEUTRINO DEVELOPMENT CORPORATION v. SONOSITE, INC.,

[事件の種類]特許侵害事件(証人排除の動議に対する略式判決・一部認容一部棄却)

[事件の経緯]

(a)Richard T. Redano は、1997年9月9日に、医療発明(人体の一部についての血行動態の刺激・監視及び薬物伝達の加速の方法及び装置に関する発明)に関して米国に特許出願(08/926209)を行うことで米国特許第5947901号を取得するとともに、その一部継続出願として米国特許出願(09/315867)を行い、特許権(U.S.Pat No. 6221021)を取得しました。

(b)Neutrino Development Corporation(原告)は、前記特許(本件特許)をRedanoから譲り受け、そしてSONOSITE, INC.,(被告)を特許侵害で訴えました。

(c)被告は、抗弁の立証のために7人の証人を立てました。

(d)原告は、全ての証人に対して証人排除の動議、特許侵害の略式判決を求める動議を提出しました。

(e)裁判所は、証人排除の動議を検討し、その一部を認容し、そして本件特許の文言侵害を認める略式判決を出しました。

(f)この記事では、証人の一人であるの証言のうちQuistgaardに関する部分を紹介します。


[当事者の主張]

 原告は、Diasonicsの超音波装置は本件特許のクレームを予期させる(anticipates)という証人(Quistgaard)の意見が信頼できる基礎を欠いていると主張している。その理由は、彼のレポートには彼の結論を裏付ける事実が示されていないからであるとされている。


zu

[裁判所の判断]

 発明の予期性に関する証言では、クレームを構成する各エレメント{我が国でいう発明特定事項}を特定し、各エレメントに対する証人の解釈を述べ、各エレメントが先行技術文献にどのように開示されているのかを詳しく説明しなければならない。

 Schumer v. Laboratory Computer Sys., Inc., 308 F.3d 1304, 1315

 単に予期性の結論だけを述べた証言は不十分である。

 デポジションにおける証人の証言は、彼の結論は2つの装置のクレームの比較に基づくと述べているが、具体的に、本件特許のクレームがDiasonics特許のクレームにどのように開示されているのかを説明し損なっている。

 従って、Diasonics特許からの予期性の論点に関する証人の証言は、ダウバートスタンダードに照らして十分に信頼できず、従って裁判で採用することができない。


zu



[コメント]

 特許出願の要件(本事例では予期性)が欠落しているという主張を、結論だけでなく、根拠を示して説得しなければならないというのは、ある意味当然のことであります。しかしながら、特筆するべきは、根拠を示すことを怠ったことを理由として、証拠としての受け入れを却下されたことです。

 デポジションにおいて証人を尋問する当事者の立場からすると、証人は“先行特許から本件特許が予期できる。”旨を証言し、その根拠として、証人が先行特許と本件特許との比較の結果であると述べたとしたとします。当事者としては、予期性がないという具体的な理由は、後で聞けば良いと考えて打ち切ったのかも知れません。

 しかしながら、裁判所の立場としては、結論の根拠は“先行特許と本件特許との比較である。”とだけ言われても、その是非を検討しようがなく、そうした証拠は裁判上の役に立たないと判断する可能性があります。通常、審理するべき証拠は膨大に存在し、裁判所としてはなるべく証拠の数を制限したいからです。

 従って、専門家証言の意見は、それが依拠する根拠が検証可能な程度に具体的である必要があります。



留意点

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