内容 |
①不利益変更禁止の原則の意義
(a)民事訴訟の口頭弁論は当事者が原判決の変更を求める限度において行うことができ、また原判決の変更は不服申立ての限度においてこれを行うことができます。
従って、原則として(すなわち、相手方が独立の上訴或いは付帯上訴をしない限り)、原判決を、上訴人にとって不利益となるように、変更することはできません。
すなわち、上訴人は、たとえ敗訴しても、上訴が棄却されるに止まり、原判決以上に不利益な判決を受けることはありません。
②不利益変更禁止の原則の内容
(a)特許に関する事例として、平成25年(ネ)第10016号(化粧品炭酸パック事件)を紹介します。
これは、特許侵害に対する差止請求、及び補償金請求権(特許出願人が所定の警告後特許権の設定登録前に業として当該特許出願に係る発明を実施した第三者に対して補償金を請求できる権利)の行使をした事件の控訴審です。
控訴人(被告)は、化粧品炭酸パックの特許発明の無効理由(進歩性の欠如)を主張しましたが、裁判所により、この主張は取り下げられました。
また前記補償金請求権の請求額の認定に関して、原判決より若干増額された金額が認定されましたが、被控訴人である特許権者が付帯控訴していないため、不利益変更禁止原則により,結局、一審で認容された額で請求できるに止まるとされました。
→付帯控訴とは
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