内容 |
@上訴の意義
(a)上訴は、訴訟法上の裁判所に対する不服申立ての方法のうちで判決の確定前に行われるものです。
(b)上訴は、判決遮断の効果(判決が確定することを妨げる効果)を有するものであり、確定判決に対する再審の訴えなどは対象外です。
(c)上訴の種類として次のものがあります。
・控訴…第一審の終局判決に対する上訴。
・上告…控訴審の終局判決に対する上訴。
・抗告…判決以外の裁判である決定及び命令に対する上訴。
(d)上訴をする訴訟法上の権利のことを、上訴権とを言います(→上訴権とは)。
A上訴の内容
知財関連の判例から“上訴”という用語が争点に対する裁判所の判断に関係した事例を紹介します。
(a)特許侵害訴訟の仮処分命令(侵害行為の差止)が特許無効の審決確定により異議又は上訴手続により取り消されたなどの場合、仮処分の債権者は、当該仮処分により債務者が被った損害を賠償する責めを負うか(平成15年(ワ)第6256号)。
裁判所は、一般に、仮処分命令が異議もしくは上訴手続において取り消されたなどの場合には、他に特段の事情のないかぎり、当該債権者には過失があったものと推認すべきではあるが、当該債権者がその挙に出るについて相当な事由があったときには、上記取消しの一事をもって同人に当然過失があったということはできないという最高裁判決を示し、
そして、特許出願の日前に公開された複数の刊行物の組み合わせにより進歩性を欠如することが無効理由とされ、その主張・立証に相当の困難を伴うような場合には、債権者に過失があったとは言えないと判断しました。
→仮処分のケーススタディ1
(b)特許出願の拒絶査定不服審判の審決(請求棄却)の確定後に再審を請求する場合において、前記審判中に除斥・忌避の申立てがあった審判官が再審の審理に再び関与することは法律上妥当か(平成14年(行ケ)第488号)
原告は、除斥・忌避等の制度は、憲法32条の規定に基づいて、「公正な裁判を保障する公正な裁判所」を実現するための手段として定められており、本件再審事件において、前記審判官が審理判断することは、自らが関与した原審決について「判断の遺脱」があるか否かを自分で審理判断することであって、極めて不公正であるから、両審判官に除斥原因があることは、憲法32条の規定自体から明らかである旨を主張した。
これに対して、裁判所は、
原告の上記主張は、自らの判断遺脱の有無を自らが審理判断することは、裁判ないし審判の制度として不公正であるとの前提があるところ、そのような前提は、審級関係のある上訴制度については妥当するにしても、…裁判制度一般について常に妥当するものであるとは到底考えられず、
民事訴訟法における類似の事件についての最高裁判所の判断に照らして、特許法における拒絶査定不服審判の確定審決とその再審についても、後者を担当する審判官が前者に関与していたことを除斥事由としないこととしても、何ら問題はないと、判断した。
→除斥処分のケーススタディ1
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