体系 |
行政行為 |
用語 |
仮処分 |
意味 |
仮処分とは、係争物に関する給付を目的とする請求権の執行保全、及び争いがある権利関係に関する仮の地位を定めることを目的とする手続を言います。
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内容 |
@仮処分の意義
(a)仮処分の種類として、次のものがあります。
・係争物に関する仮処分…金銭債権以外の特定物の給付・引き渡しその他の特定の給付を目的とする請求権の執行を目的とする仮処分を言う。
→係争物に関する仮処分とは
・仮の地位を定める仮処分…争いがある権利関係について仮の地位を定めることを目的とする仮処分を言う。
例えば特許権の侵害を組成した物の廃棄等を求める請求権(差止請求権)の執行を目的とする場合が該当します。
→仮の地位を定める仮処分とは
(b)仮処分に対して、金銭債権または金銭債権に変えることができる請求権のために、債務者の財産を確保し、将来の強制執行を保全する手続を、仮差押えと言います。
→仮差押えとは
(c)仮処分の態様
仮処分という用語は、仮処分命令を発するための手続と、仮処分を債務名義として行う仮処分命令の執行手続との双方を含みます。
(d)仮処分命令を発した裁判所を、仮処分裁判所と言います。
(e)事情の変更などの理由で仮処分の取消しが行われることがあります。
A仮処分の内容
(a)一般に、被疑侵害品の製造・販売などを禁止する仮処分の命令が出され、この命令が執行された後に当該処分が取り消された場合には、前記命令を得て執行した者(債権者)は、民法709条の“故意又は過失”が存在したことを条件として、相手方(債務者)に対して、その執行により生じた損害を賠償する義務を負います。具体的には、
・仮処分命令が異議もしくは上訴手続において取り消された場合、あるいは
・本案訴訟において原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合
“他に特段の事情のないかぎり、当該債権者には過失があったものと推認すべきであるが、
当該債権者において、その挙に出るについて相当な事由があった場合には、上記取消しの一事をもって同人に当然過失があったということはできないというべきである。”という判例があります(最高裁昭和43年12月24日第三小法廷判決)。
(c)仮処分は、
・本格的な審理を経ないで、早期に侵害行為を止められるというメリットがある反面、
・後で被保全権利が存在していなかったと判断され、損害賠償義務を負うデメリット
も想定されますので、仮処分の申し立てをする場合には、そうした不利益が生じないがないように、十分に注意することが必要です。
(d)特に特許権侵害訴訟において、被疑侵害品の製造・販売などを禁止する仮処分の命令の申立てをする場合には、本案訴訟で相手方が特許無効の抗弁を行い、特許の有効性が覆される可能性があるので、仮処分の申し立てということに注意する必要があります。
(e)特許無効の理由が、特許出願日前に公開された複数の刊行物の組み合わせから特許発明を容易にすることができたこと(進歩性の欠如)であり、その立証(進歩性の判断を含む)が相当困難であったというような場合には、仮処分の債権者に過失があったとは言えないと判断された事例があります。
→仮処分のケーススタディ1
逆に言えば、無効理由が存在する可能性が高いと知っていながら、仮処分の申し立てをしたような場合には、逆の結論が出る可能性があるため、注意が必要です。
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留意点 |
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